仕方ないとは絶対に終わらせない現場が楽しい

 

 

今回のミュージカルは2チームで上演されます。浦井健治さんが“ぼく”、柚希さんが“母”、成河さんが“大切な人たち”を演じるチームと、成河さんが“ぼく”、濱田めぐみさんが“母”、浦井さんが“大切な人たち”を演じるチームです。オリジナルミュージカルを、クリエイターとキャストみんなで一から作るのは、ワークショップのようですごくおもしろいと、柚希さんは目を輝かせます。

「宝塚歌劇団でもオリジナル作品は作っていましたが、台本について出演者が何かを言うことはないのです。この現場では、『この言葉が必要か』とみんなで話し合いをして、共有して進むのが素敵だなと思いました。例えば脚本家の方にすごく思い入れがあっても、それが伝わっていなくて、役者はさらっと台詞を言ってしまったりすることがあるじゃないですか。でも、一緒に話し合いをすることによって、重要な箇所が全員に共有されていくんです」

 

経験を重ねることによって、これだけやればこれだけの結果が出ると、成果を想定して行動することもできるようになります。一方で、経験を積んできたからこそ手を抜かずに、最善を尽くし、細部にまで拘って、新しいものを生み出すこともできます。

「経験豊富な方が揃っていらっしゃるので、みんなが客観的にこの作品を見ていますし、気軽に観にきてくださったお客様を引き込むにはどうすれば良いかを、様々な観点から話し合っています。普通ならば、90分のミュージカルだから仕方ないよねと終わらせるところを、絶対に終わらせない現場で、とても楽しいです」

浦井さんと成河さんは、反対の役を交互に演じますが、ふたりがプロフェッショナルだからこそいい現場なのだと、全幅の信頼を寄せました。

 

「『大変だ』という人が誰もいないんです。おふたりは特に大変な作業をされているのに、きっと、この舞台を受けたからには絶対にいいものにすると、心して引き受けたのだと思います。いつかご一緒したいと思っていましたが、目を見て芝居をしたときに、相手が何を感じて、何を見せたいと思ってやっているのかがすごくわかるんです」

そして、母と息子としてお芝居をする浦井さんに対しては、本当に母目線になるといいます。

「浦井さんは、なんてやわらかで、優しくて、透明なんだろうと思います。そして、どんどん色に染まっていくんです。面と向かって母と子が対立する場面があるのですが、優しいんですよ。記憶がなくて困っているのに優しいんです。だから守らねばと思ってしまう。大きいのに、小さい子みたいに見えてくるんです。役者さんは、いろいろな役をやっても、その本人が丸裸に出るものだなといつも思いますが、浦井さんはすごく優しい方なんだなと、組めば組むほど思います」