『愛の不時着』で主演二人の結婚に、多くのファンは「あの愛情はやっぱり本物だったんだ!」と喜びの大号泣だったと思うのですが、怒られるのを承知で言えば私はこういう展開には微妙な気持ちになります。というのも私が見たいのは「演技のプロの芸」であり、その結果としての「驚くほどリアルなフィクション」だからです。まあ『愛不時』のような明るくめでたいことに目くじら立てようとは思いませんが、香川照之には本当に心底がっかりし、吐き気がするほどの嫌悪感を憶えました。今回聞こえてきた性加害、自分が下に見ている人間にたいして人間と思わない扱いをしてはばからない下品さが、「大和田常務」そのまんまだったからです。

写真:Pasya/アフロ

思い返せば財務省事務次官による気色悪すぎるセクシュアル・ハラスメントが告発されたのが2018年、この事件を機にある程度ちゃんとした人は、心の底はどうあれ「言動にちと気をつけたほうがいいっぽい」くらいに理解したはず。それを経ての2019年。どっちも「特権意識肥大化装置=東大卒」ってのがシビれます。姫野カオルコさんの著書のタイトルまんま(性加害の内容も激似)、『彼女は頭が悪いから』ってことでしょうか。

ええと、さらに気持ちが悪いのは、この人を広告に使っている世界一の自動車メーカーのトヨタが、当初、「許されざる行為」とか言いながらCMも止めず、「当事者間で解決がなされており、また、ご本人も深く反省し、謝罪されている」から、今後を注視して「今すぐ何かしらのアクションを起こすことはない」とのたまっていることです。はぁ? 許しちゃってんじゃん。

 

CMキャラクターといったら「会社の顔」だし、しかもそのCMではトヨタがどれだけ先進的な会社か! をレポートする役割です。高級クラブでホステスの胸元に手を突っ込んでブラジャーはぎとって……って、控えめに言っても強制わいせつ、つまり犯罪行為をやってる姿が目に浮かんじゃうんですけど、そういう女性たちの気持ちは……あ、もしかして女性は客じゃないから構わないってこと? 世の中が収まらないと見るや、CMを止め契約更新しないと態度を変えましたが、こうした日和見的な態度、あわよくば何もなかったかのように済まそうとする態度が、こうした事態への対応として最悪であることは言うまでもありません。それが世界に冠たるトヨタの考える世界標準?

 
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