75歳以上の医療費負担に2割枠が追加


厚生労働省が発表した「令和元年度 国民医療費の概況」によると、人口1人当たりの年間医療費は、65歳未満では平均19万1900円。一方、75歳以上は93万600円と、4.8倍もの金額になっています。2025年には、1947〜49年生まれの団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療費の増大が見込まれます。そのため、国は新たに今回の2割負担枠を設けました。その背景には、後期高齢者の医療費のうち、窓口負担を除くと約4割が現役世代の負担になっていることも挙げられます。2010年度には現役世代1人当たり約4.4万円だった負担が、2020年度には約6.3万円と、1.5倍近く上がってしまっているのです。

2022年9月30日までは、75歳以上の方の医療費負担割合は原則1割負担で、一部現役並み所得者は3割負担でした。今回の改正により、1割、3割負担のほか、2割負担が追加されたことになります。1割負担のうち、約2割(約370万人)の方が2割負担の対象となりました。

 

対象となるか否かの判定方法は?


該当者には、新たな負担割合が記載された被保険証が9月頃に交付されていますが、厚生労働省のホームページには、対象となるか否かの判定方法が載っています。掲載されたフローチャートによると、判定は住民税課税所得と年金収入他等の金額の2つが基準となっています。

年金収入他には、不動産や株などの所得も入るため、一時的に医療費自己負担が増えるケースもあります。奈美さんの友人である貴子さんの父親も、今回の改正で2割負担になったとのこと。こちらのご家庭は単独世帯であるため、課税所得が28万以上、年金収入は200万円以上で、今回の対象となりました。

課税所得:年金収入(200万)-公的年金等控除(110万)-社会保険料控除(10万)-住民税基礎控除(43万)=37万円


2割負担となる人への配慮措置とは


今回2割になる人への配慮措置も用意されています。2022年10月1日から2025年9月30日までの期間は、同一の医療機関での受診において月3000円を超えた場合、上限額以上は窓口で支払わなくても良いことに。また、複数の医療機関での受診や薬局での支払いを合算した負担増加額を月3000円までに抑えるため、その差額が後日高額医療費として払い戻しされます。ただし入院の医療費は対象外なので、奈美さんの父親のケースは当てはまりません。なお、医科・歯科は同一の医療機関でも別算定となります。

払い戻しの費用は事前に登録した口座に後日自動的に振り込まれるため、口座を登録していない人は、各都道府県の後期高齢者医療広域連合や市区町村から郵送される申請書を使って手続きを行うことになります。

2025年以降も後期高齢者の数は増え続け、急激に膨れ上がることが予想される高齢者の医療費。介護保険サービスは、今後原則2割負担、もしくは2割負担の対象者を拡大することも検討されています。医療保険も、場合によっては今後さらなる改定が待っているかもしれません。

ミモレ世代も先送りせず、今から少しずつ貯金をしていくことが、安心な老後につながるのではないでしょうか。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

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