時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会現象について小島慶子さんが取り上げます。
これから毛の話を書くので、他人の毛について知りたくないという人はご注意ください。
VIO脱毛という言葉をご存知でしょうか。mi-molletでもVIO関連記事は非常によく読まれるそうです。みなさん、気になってるんですね。ご存じない方のために念のため説明すると、VIO脱毛とは、鼠蹊部に挟まれた領域(V)と、両脚の間にあり体の前面と背面をつなぐ領域(I)と肛門の周囲(O)に生えている体毛をレーザー照射などで取り除く施術のことです。
美容目的だけでなく、最近は介護で排泄のお世話を受けることになった際に備えて局部の衛生を保ちやすくするための「介護脱毛」という言葉を聞くようになりました。レーザーは黒い色素に反応するので、毛が白くなる前にやっておいたほうがいい、というのもよく聞きますね。
およそ9年前から東京とオーストラリアの家族の元とを行ったり来たりする生活になり、海に入る機会が増えたのを機に、私ももろもろのレーザー脱毛を検討し始めました。すると行きつけの美容皮膚科の看護師さんが「実は私、介護施設でも働いているんですけど、毛がないほうが清潔に保てるし、正直言って介護する側の負担も減ります。やるなら早いうちがいいですよ!」と力説したのです。おお、介護士さん目線で考えたことはなかった、まさか脱毛が人助けになるとは……。
で結局施術に踏み切ったのは、毛の動向を気にせずに海で思い切り遊びたいという理由と、将来介護士さんの負担を減らしたい、要介護状態でもなるべく清潔な体でいたいという理由からでした。しかしもし当時、私が恋愛の現役だったら、他にも理由があったでしょう。つまり性的な場面における他者の眼差しを意識した動機が。きっと、なんらかの手入れをしているほうが性交渉の際に相手の心象が良くなるのではないか、または自身の不安が軽減するのではないかと考えただろうと思います。
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