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食品を中心に10月1日から多くの商品で値上げが行われました。なぜ10月に値上げラッシュとなっているのでしょうか。

 

調査会社の帝国データバンクによると、10月は約6700品目が値上がりしており、今年1月からの累計では2万品目を突破しています。平均の値上げ幅は14%に達します。今年4月に多くの商品で値上げが行われたことは、皆さん記憶に新しいと思いますが、それに引き続き、10月は驚異的な値上げラッシュとなりました。

4月と10月に値上げが集中しているのは、日本企業の多くが3月決算となっているからです。

全世界的な物価高騰によって仕入れ価格が上昇しており、企業の経営者にしてみれば、新しい決算期が始まる4月段階で価格を上げておかないと、今年度の業績を確保できません。3月決算の企業は、9月が半期となり、10月からは下半期に入ります。春以降、コストはさらに上がっていますから、来年3月の業績を考え、多くの企業が10月1日の値上げに踏み切ったわけです。

一般的に、経済状況の変化でコストが上昇した場合、最終商品の値上げが行われるまでには、半年程度の時間差が生じます。

今年4月の値上げは、昨年の原油価格や資材価格の上昇を反映したものであり、ウクライナ侵攻の影響による食糧価格の上昇分は含まれていません。10月の値上げには、ウクライナ情勢が大きく影響しており、それに円安の影響が加わったという図式です。

しかしながら、本格的に円安が進行したのは春以降ということになりますから、円安の影響が価格に100%反映されたわけではありません。円安の影響が本格化するのは年末以降なので、年明け以降、再び円安を理由にした値上げが行われる可能性はそれなりに高いでしょう。

ちなみに、日本全体の物価動向を示す消費者物価指数(総合値)は、8月時点で前年同月比3%の上昇となっています。しかしながら、一連の大幅値上げからも分かるように、私たちが日常的に購入する商品の価格は3%どころの値上げではありません。

消費者物価指数は、あらゆる商品の価格を平均したものですから、世の中にある全ての製品・サービスの価格が含まれます。食品価格が値上がりしていることから、家計は他の支出を抑制しており、中には売れ行きが著しく悪くなり、値下げを余儀なくされている商品もあります。消費者物価指数は、こうした商品もすべて含めた平均値ですから、消費者の生活実感とはかけ離れてしまうのが現実です。

 
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