識者の中には、消費者物価指数の上昇率は大したことがないので、日本はデフレ基調が続いていると主張する人もいます。しかしながら、こうした感覚というのは統計データと生活実感の乖離を無視したものであり、現実に即した判断とは言えないでしょう。日本経済は他国と異なりインフレにならない、などと言われてきましたが、確実に物価は上昇しており、日本がインフレに突入していることはほぼ間違いありません。

ではこの物価上昇はいつまで続くのでしょうか。

NYの NASDAQマーケットサイト前を行き交う人々。6月、アメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月より9.1%上昇。9%台の上昇率は1981年11月以来で、約40年ぶりの高水準となった。写真:AP/アフロ

今、物価が上がっているのは全世界的な現象であり、日本だけの話ではありません。ロシアのウクライナ侵攻によって原油価格や食料価格が上がったことや、新興国の生活水準向上で、全世界的に需要が拡大していること、各国が行なってきた量的緩和策の影響でマネー過剰になっていることなど、複数の要因が絡み合っています。これらの要因が取り除かれないと、インフレを完全に抑え込むことは難しいでしょう。

 

一方、米国など先進諸外国は、インフレの悪影響が大きくなってきたことから、金利を大幅に引き上げ、強制的に物価を下げる政策に舵を切っています。もし、米国がこのまま金利の引き上げを続けた場合、来年には、ある程度物価が落ち着く可能性もあります。

しかしながら、金利を引き上げて物価を抑制するという政策は、意図的に景気を悪くするというやり方であり、物価上昇は収まっても、景気が悪くなるという副作用があることを忘れてはなりません。

日本国内に目を転じれば円安が大きな影響を与えており、円安の主要因は金利をゼロにするという日銀の金融政策にあります。日銀は今のゼロ金利政策を転換する方針は示しておらず、この状態が続くと、円安も継続する可能性が高いとの解釈になります。

全体を通してみると、物価が上がる要因が十分に取り除かれていませんから、少なくとも年内から来年前半にかけては、物価上昇が続くと考えた方が良いでしょう。
 

 


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