彼が「やってみたいです」と言えば、必ずやる、という意味です
――友だちと一緒のときのJIMINさんは、どんな様子でしたか。
キム:友だちがたくさんいて、付き合いがいいタイプでしたね。勉強もよくできてリーダーシップがあり、学校では学級委員をしていました。やんちゃな友だちを注意することもありましたが、JIMINは優しく上手に話しかけるので、嫌な感じがしないんです。何に対しても自分がまず最初に行動し、そして遊ぶときは楽しく遊ぶ。そんな感じなので、みんなに信頼され、好かれる。友だちの悪口を言う姿も、一回も見たことありません。中学のダンスの課外授業のときは年上の女子生徒たちに人気があって、レッスンが終わるのを待っているファンがたくさんいました(笑)。JIMINの話をしているだけで、うれしい気持ちになりますね(笑)。
――JIMINさんを教えながら、どんなアドバイスをしましたか。
キム:「最高のものに触れる」というのがわたしの信条です。たとえば、ポッピンの元祖はポッピン・ピートという人物なのですが、当時、このスクールでは、彼のように有名な講師を招聘して特別講座を開催していました。わたしのアドバイスに影響を受けたというよりも、JIMINはそうした経験から視野を広げていったのではないでしょうか。潜在力のある人は、視野を広げるチャンスを与えると、自然と伸びていく。だから、機会を与えて自ら学ぶようにするBig Hit Entertainment(現HYBE)の方針もJIMINに合っていると思いました。BTSのメンバーたちは、アメリカでミュージシャンに会って、直接学びましたよね。JIMINは練習生になるまでボーカルのトレーニングを受けたことがまったくなく、Big Hitの練習生になってから習得したんです。ダンスも外国のオリジナル、本物に触れるのが一番大事だと考えています。
――Big Hit Entertainmentのオーディションに合格したのは、JUST DANCE ACADEMYに在学していた高校生の時です。
キム:釜山芸術高校の舞踊科で現代舞踊やバレエを専攻していたのですが、JIMINの夢は芸能人でした。中学生のときからずっと。釜山にBig Hitが来て、いくつかのスクールを対象としてオーディションを開催すると知り、JIMINに「受けてみる?」と聞いてみたんです。そうしたら、「はい、やってみたいです」と。彼が「やってみたいです」と言えば、必ずやる、という意味です。
たじろいだり踏みとどまったりする彼を見たことは一度もありません。ポジティブで自分を信じているので。中学1年のときからずっとそうでした。「先生、ちょっとわからないので教えてください」と、学ぶときは謙虚に質問しますが、何かに挑戦するときは、ためらわずに前に進むのがJIMINです。
――先生はオーディション合格を確信していましたか。
キム:ダンスはいけると思っていました。でも、歌は当時まったくレッスンを受けたことがなかったんです。オーディション担当者にも、「ダンスがすごく好きだっていうのが伝わってくるけど、歌はあまり好きじゃないのでは?」と言われたそうです。歌は練習生になってから学んだ。今はボーカルでも秀でた能力を発揮していますが、JIMINは努力を惜しまないので、何をやっても伸びるタイプなのです。
――生徒の潜在力を引き出すためには、指導者の存在も大きいと思います。才能を花開くようにする秘訣とは。
キム:12年間講師をしながら感じたことであり、わたしの方針でもあるのですが、子どもを変えることができるのは、親だけです。講師は生徒にとって仲間のようなものであり、視野を広げる存在。講師が親のような気持ちになってはいけないんです。執着してしまうから。かつて、わたしは生徒を「変えよう」としていました。すると、問題が起きる。そうじゃなくて、講師としてわたしができるのは、視野を広げたり、話をしたりして、少しでもより高い場所に行けるようにすること。経験の機会を与えること。
親だけが子供を変えることができるんです。親の方針が大事です。
JIMINのご家族も素晴らしい方なんです。父親の教育方針がすごくよかった。子どもに対し何かを強要することはなく、ひたすら待つ。JIMINが夜中の2時、3時まで練習するときは、外に停めた車の中でずっと待っていました。生徒がイベントに参加したりするときも、父親はいつも必ず足を運んでいた。クラブでやるイベントもあり、そういう雰囲気をよく思わない保護者もいらっしゃるのですが、JIMINの父親はいつも来て応援していました。JIMINは他のスクールにも通っていて、そこでも同じだったと聞いています。待つことが大事なんです。子どもを待ち、やりたいことがあれば、それにたいして責任を持つことを教える。親がそんな風に教育していたので、才能が花開いたのだと思います。
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