俳優の谷原章介さんが、自身がMCを務めるテレビ番組で、事実と異なる発言をしていたとして謝罪する出来事がありました。その直前には、テレビ朝日社員の玉川徹さんが、やはり番組内で誤った発言を行ったとして謝罪しています。
人には誰にでも間違いがあり、すべてをやり玉に挙げていては、発言する人がいなくなってしまいます。問題発言をしても謝罪するどころか、その事実さえ認めない政治家が多数、存在している現実を考えれば、お二人とも謝罪・訂正で十分だと筆者は考えます。過去のケースを見ても、番組MCあるいはテレビ局社員が事実に基づかない発言をしたことがありましたが、訂正あるいは謝罪にとどまっています。
今回、谷原さんの発言を取り上げたのは、発言そのものではなく、発言が出てきた経緯について少し気になったからです。
谷原さんは、他の出演者とともに、野党第一党である立憲民主党の代表質問の中身について議論していたのですが、コーナー全体として「与党も悪いが、野党も悪い」といった論調があったように思います。近年、ネットの普及によって、以前にも増して多くの批判が飛び交うようになっており、両論を併記しなければいけないという雰囲気が、テレビに限らず社会全体に蔓延しています。
テレビは公共の電波であり、政治的公平性が法律で定められていますから、両論を取り上げること自体は当然の行為といってよいでしょう。しかしながら、常に機械的に異なる意見を併記すれば公平性が保てるのかというとそうではありません。特に国会の論戦について取り上げる場合には、議院内閣制という日本の制度をよく理解した上で、適切な対応が必要だと筆者は考えます。
議院内閣制というのは、内閣が議会に対して責任を負う制度のことを指します。
米国のように政府と議会が完全に独立しているわけではありませんから、日本の首相は、国民から直接選ばれるのではなく、国会を通じて間接的に国民から選ばれる形になります。したがって首相あるいは内閣は、国民の代表者の集まりである国会に対して、常に責任を負わなければなりません。
これが議院内閣制の本質であり、日本の民主主義制度の根幹をなす重要なポイントです(日本が議院内閣制を採用している背景には、英国と同様、皇室という日本の歴史そのものといってよい君主の存在が関わっていますから、筆者はこの制度は大事に後世に残していくべきだと考えます)。そして、今回の発言は、岸田文雄首相の所信表明演説を受けて、各党が代表質問を行うという一連のやり取りについてのものでした。
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