2ちゃんねる創設者であるひろゆき(西村博之)さんの、沖縄に関する発言が物議を醸しています。最近では、沖縄の基地問題について丁寧に解説するメディアも減っており、若い世代を中心に、なぜ沖縄だけが基地問題で大きな騒ぎになるのか、理解できないという人も増えているようです。

沖縄米軍所属のオスプレイ機(撮影は2017年)。提供:U.S. Marine Corps/ロイター/アフロ

沖縄に多数の米軍基地が置かれていることは、多くの人が知っていると思います。米軍基地そのものは、日本各地にあり、(沖縄の数が突出して多いとはいえ)沖縄固有の問題ではありません。では、なぜ沖縄の基地問題は、他県と大きく異なるのでしょうか。それは、沖縄だけが持つ歴史的、地理的条件と関係しています。

 

明治維新以前、沖縄には琉球王朝があり、徳川幕府とは異なる統治が行われていました。琉球王朝は中国(明国や清国)に対して朝貢していましたが、1609年に島津藩が琉球に侵攻。琉球は島津藩の傘下に入ったものの、明国や清国への朝貢も続けるなど、独特な立ち位置のまま明治維新を迎えることになったのです。明治政府は1897年、沖縄に軍隊を派遣して首里城から国王を追放し、沖縄県を設置しました。

沖縄以外でも、明治維新によって各藩の藩主が追放されましたが、幕府の下、統一された国という認識がありましたから、明治政府を支持する人たちと、幕藩体制を支持する人たちとの争いという位置付けでした。ところが沖縄の場合、もともと違う国でしたから、島津藩による統治や明治政府による沖縄県の設置について、強制的な日本への編入と考える人も少なくありません。

沖縄が不幸だったのは、明治維新から80年近く経って、再び同じような状況に追い込まれたことです。

1941年に始まった太平洋戦争では、沖縄は国内でほぼ唯一の激しい地上戦となり、多くの犠牲者を出しました。一般市民が軍務に動員されるケースも多く、各地域で集団自決が行われるなど、状況は極めて悲惨でした。

戦争が終わるやいなや、今度は米軍の占領下に置かれ、沖縄は日本ではなくなってしまいます。道路も右側通行となり、米国にとって沖縄は占領地ですから、住民に対する十分な行政サービスも行われませんでした。沖縄が日本に返還されたのは終戦から27年も過ぎた1972年のことです。

太平洋戦争では、各地で多数の市民が空襲の犠牲となりましたから、一連の出来事を単一で捉えれば、沖縄だけに限った話ではないかもしれません。しかし、歴史的にもともと違う体制だったことや、戦後も長期にわたって米軍の支配を受け、経済的に苦しい時代が続くなど、沖縄が置かれた状況は複雑です。

加えて沖縄には地理的な特殊性もあります。

 
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