臨時国会は内閣が召集し、所信表明演説は首相が国会に対して演説の機会を願い出る形で行われます(現実には慣行となっているので、必ず所信表明演説は行われますが、形式的にはそうなります)。首相は議会に対して責任を負う立場ですから、国会の冒頭に、自らの政治姿勢について国会(つまり国民)に説明するため、望んで国会で演説するのです。そして、各党の質問は、その演説を受けて行われます。

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10月3日、第210臨時国会で所信表明演説に臨んだ岸田文雄首相。写真:つのだよしお/アフロ

つまり、臨時国会の冒頭に行われる所信表明演説(通常国会の場合は施政方針演説)と代表質問における主役は、あくまで首相(内閣)であり、国民あるいはメディアは、まずは首相の所信表明の中身を中心に、政権の今国会への取り組み方について議論するのが先でしょう。

 

来週以降には、予算委員会などで次々と具体的な論戦が行われ、その中で、政権が掲げる政策の妥当性や、野党の姿勢などが明らかになっていきます。

所信表明演説と代表質問は一連の論戦のスタートという位置付けですから、私たちが最初に行うべきことは、政権(与党)が掲げる各政策と、それに対して野党がどのような方向性で論戦を挑もうとしているのかについてしっかり認識することであり、野党が十分な働きをしているのかについての評価は、国会での具体的な議論が進んでからにすべきです。

昨今の議論を見ていると、こうした国会での議論の手順を無視し、常に両方批判すればよいという安易な発想があるように思います。

本当の意味で公平な議論を行うためには、日本の民主主義制度について、価値観を共有することが大切です。国会の冒頭においては、政権が掲げた政策の方向性について議論し、その後、国会で具体的な論戦が進む中で、野党の政治姿勢について議論するといったメリハリが必要でしょう。

岸田氏の所信表明演説と立憲民主党の泉健太代表の代表質問は、衆議院のWebサイトにある「インターネット審議中継」のページでいつでも見ることができますので、皆さんも、所信表明演説と代表質問がどのような中身だったのか、ぜひチェックしてみてください。
 

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