小さな成功体験を作って自分をほめてあげる


──本書のあちこちで「自己肯定感」という言葉を目にしましたが、自己肯定感を高めておけば、他人の動向にあまり惑わされない気がします。坂東さんの中で自己肯定感を高める方法はありますか?

自己肯定感を高めるのはなかなか難しいですよね。ちなみに学生の皆さんには、「小さな成功体験」を獲得していこうと言っています。もちろん、成功体験が大きければ大きいほど自己肯定感は増すのでしょうが、現実には大きな成功なんてそうそう手に入りませんよね。大きな目標を達成できなくて自信をなくすより、小さな成功体験を積み重ねるほうがいいと思います。3㎏瘦せるなんて言わないで、3日間だけ摂取カロリーを少し減らしてみるとか。自分が確実にできることをやって、「偉い! 頑張ったね!」と自分をほめてあげるんです。

──日本人には難しそうですね。生真面目な性格もあると思いますが、メディアなどを通して「完璧でなければいけない」という使命感を刷り込まれているのも、自分をほめられない原因になっている気がします。

40代、50代女性の場合だと、仕事も家事も完璧にこなす、というイメージですね。でも現実にそれを達成できている人は少ないと思います。みんな上手くやっているように見せているだけ。ある種の幻想ですよね。ですから、自分ができることで小さな成功体験を作り、自分で自分をほめてあげなきゃ。他人はなかなかほめてくれないです。

自分を「大事にする」ことと「居直る」ことは別もの。坂東眞理子さんに聞く、50歳以降の心の持ち方_img0
写真:shutterstock


本当の意味で「自分を大事にする」こととは?


──それは本書で書かれていた「自分を大事にする」ことに繋がりますね。ただ、坂東さんが考える「自分を大事にする」ことを実践している人は少ないと思います。

 

確かに、40代、50代にもなると「どうせ私なんか」「何をいまさら」と諦めて、その結果「ありのままでいいんだ」となる人も多いと思います。でもそうやって居直るのは、自分を大事にしているのではなく「見捨てる」ことだと思います。そうではなくて、自分の中の「ちょっと良いところ」を見つけて少しだけブラッシュアップする。あるいは、他人には評価されなくても、自分で頑張ったなと思う部分があればほめてあげる。それが本当の意味で自分を大事にしていることだと思います。

──そこを取り違えている人は多いと思います。「ありのまま」でいることはとても楽ですから、自分を大事にしているようにも見えますが、その分、人生がつまらなくなっていく気がします。

そう思います。常に努力を続けるのは疲れるでしょうから、時おりでいいんです。自分の良いところをちょっとだけブラッシュアップする。それをやっている人とやらない人とでは、徐々に差が大きくなっていくでしょう。それこそ、50歳以降になると如実に出るでしょうね。

──その「差」は、どういったところに出るのですか?

人生に対する「やる気」に出てきます。自分を大事にしていない人は動こうとしない。つまり、新しいことにチャレンジしようとせず、やらない言い訳だけ上手くなっていくんです。否定的な言葉はいくらでも並べることができるのですが、その暗さはウイルスみたいに他人にも伝染します。だから、他人から避けられるようになってしまうんです。

──本書では、50歳を過ぎたら「お人よし」にふるまうことを薦めていらっしゃいますね。

うわべだけでもいいので、常に機嫌よく見せたほうがいいです。笑ったふりをするだけでも自分が力づけられますし。一方で小むつかしい年長者は敬遠されます。特に50歳を過ぎた人は、自分を見捨てないで、「自分もやればできる」という小さな成功体験をどんどん積み重ねていってほしいですね。
 

自分を「大事にする」ことと「居直る」ことは別もの。坂東眞理子さんに聞く、50歳以降の心の持ち方_img1

『女性の覚悟』
著者:坂東眞理子 主婦の友社 1350円(税込)

人生100年時代に突入した今、折り返しである50歳以降をどう生きるか。320万部超のベストセラー『女性の品格』の著者が、女性が後半生を強く、そして楽観的に生きるための心がまえを軽快な筆致でつづります。「覚悟」という言葉から連想されるような厳粛さは皆無。不安で押しつぶされそうな心に気持ち良く「喝」を入れ、元気な状態に戻してくれるでしょう。


取材・文/さくま健太
 

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