老後に向けて今と同じように家事ができるか不安、夫婦2人になったのでもう少し手を抜きたい……。そんな悩みを持つシニアに向けて、家事の負担がぐんと減る「疲れない家事」を提案するのは、知的家事プロデューサーの本間朝子さん。著書『60歳からの疲れない家事』では、洗濯、掃除、料理、そして名前はないけれど地味に大変な家事と、カテゴリー別に「手抜きしてもちゃんと暮らす」ためのテクニックを紹介しています。

中でも特徴的なのが、家族やパートナーにも家事に積極参加してもらう工夫が随所に散りばめられていること。そこで今回は本書から、今まで家事にあまり参加してこなかったパートナーでもきっとできる&やる気にさせられる、具体的なアイデアを一部ご紹介します!

 


家事をしてこなかった人は、家事に参加するチャンスです


60歳は、これまで家事をしてこなかった人が家事に参加する、いいタイミングでもあります。私の父は亭主関白で家事を一切してきませんでした。あるとき、母が祖母の介護のためしばらく家をあけたことがありました。それから父は外食ばかり。外食に飽きると食事を抜くようになりました。掃除、洗濯もやり方がわからず、身だしなみが乱れ、家の中も汚れてしまいました。

人は基本的な生活が回らなくなると、小さな異変に気づきにくくなります。実は、父はそのとき重い病気にかかっていたんです。体調が悪いせいで食事を抜いていたのか、料理をしたくないだけなのか、他人からは判断がつかず病は進行してしまいました。

家事はすべて自分の力でする必要はありません。「家電に頼る」「家事代行に頼む」ということも家事のひとつとしていい。それでもいいから健康的な生活を維持していないと、異変が起きていることに自分も他人も気づけなくなってしまいます。

シニア向けのセミナーでは、妻が認知症になってしまったり、先に旅立ってしまったりして、どうしていいかわからず家が散らかり放題になってしまったという夫の話をたびたび耳にします。自分のために、今これからでも家事をはじめてほしいと思います。

 

炊飯器を軸にしたごはんの「Iライン」をつくります


料理の中でも毎日のようにあるのが、ごはんを炊く、よそう、保存するという工程。この工程をラクにするには、「Iライン」をつくります。炊飯器を軸に、米びつ、茶碗、しゃもじ、余ったごはんを保存する容器を縦1列に配置。この場所に立てば、ごはんを炊く、よそう、保存するのすべてを一歩も動かずに済ませることができるようになります。

ごはんの「Iライン」。炊飯器、しゃもじ、茶碗、米びつ、保存容器が縦のラインに収まっています。

定年退職したパートナーと家事を分担するようになり、「しゃもじはどこ? 保存容器はどこ?」といちいち聞かれて困るという話をよく聞きます。ごはんのIラインをつくれば、ふだん料理をしない方にも、すぐにわかるはず。最低限、ごはんだけは炊いて、よそって、しまうことができます。家族を家事に巻き込む意味でも、ぜひ試してみてください。

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