密閉、密集、密接……3密が重ならないように! と叫ばれて早2年。最近では、徐々に日常を取り戻しつつありますが、初期の頃は3密回避にソーシャルディスタンスと、規制だらけの毎日にやり場のない鬱屈とした気持ちを抱えていませんでしたか?
今回ご紹介する『人間消失』は、私たちと同じように未曾有の感染症に翻弄される日常が舞台。ですが、本作ではそこから突如として3密とは真逆の“疎”な環境へと姿を変えるのです。
「お前ら全員◯◯◯!」男子高校生が満員電車で願ったこと
新型ウイルスの感染拡大によって、文化祭も中止、体育祭も中止、さらには父親の会社が経営危機に直面してしまうなど、鬱屈した高校生活を送る主人公・浜田誠(はまだ まこと)。
通学のために電車に乗れば、ソーシャルディスタンスとは? と首を傾げてしまうほどの満員電車にマスク警察……。そんな毎日にうんざりした彼は心の中で思わずこう叫ぶのです。
吹き込む突風、そしてみんないなくなった
悲痛な叫びを心にグッと押し込みいつも通り登校した誠。いつも通り授業が終わり下校しようとした矢先、進路希望調査を出していなかった誠を含む4人のクラスメイトはそのまま教室に居残るよう担任から言い渡されます。
生真面目すぎて少しめんどくさい安井輝夫(やすい てるお)。柔道部のエース田畑靖(たばた やすし)。どこか気だるそうな雰囲気を醸す松岡綾香(まつおか あやか)。教室に残った特別親しくもない4人ですが、外から突風が吹き込んだ瞬間に彼らの世界は一変してしまうのです。
まず、最初の違和感はいつまで経っても先生が教室に戻ってこないこと。不思議に思って職員室へ足を運んでも、そこはもちろん、校舎内には誰もいません。そして、外に出てみると誰一人歩いておらず街中は静寂に包まれています。
こうして、自分たち以外の人間はこの世界から一瞬にして消えしまったのだと気付くのです。
ノーマスクにカラオケ! 世界にたった4人しかいないのは幸か不幸か
あまりの衝撃的な状況にパニックになるかと思いきや、むしろワクワクしている誠たち。それもそのはず、彼らはここ数年の間は新型ウイルスの感染拡大によって抑圧的な生活を送っていたのだから無理もありません。
マスクを外し、コンビニで買い食いをして、カラオケを楽しむ……。そんな少し前では当たり前だった日常を、人間が消失するという非現実的な世界になってようやく謳歌するのです。
もしかしたら感染症が蔓延する世の中で、彼らのような若者にとっては“人間消失”という現象は幸せなことなのかもしれないと思った矢先、容赦ない現実が彼らを襲います。
人間が消えたことで、徐々に遮断されていくライフライン。おまけに、この4人は今まで特別親しくなかったという関係性の危うさ……。そんな小さな綻びが、予想だにしない壮絶なサバイバル生活へと続いていくのです。
私たちの住む世界では、新型コロナウイルスの対策や規制が徐々に緩和されてきていますが、誠のように世の中へ辟易するあの感覚は今でも鮮明に思い出せるのではないでしょうか。もしもあの時、自分以外の人間が一瞬にして消えてしまったら……。あなたなら一体どうしますか?
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<作品紹介>
『人間消失』
江戸川エドガワ
「お前ら全員消えてなくなれよ!」三密、ソーシャルディスタンス、マスク警察、父親の会社の経営危機…。高校生の浜田誠は感染症が蔓延する世の中に辟易していた。ある日、浜田は同級生3人とともに教室に残るように担任から指示される。安井輝夫、田畑靖、そして松岡綾香。特に親しくもない同級生たちと過ごす放課後に起こったのは――…!?人間消失サスペンスが幕を開ける!!
<作者プロフィール>
江戸川エドガワ
ちばてつや賞ヤング部門において佳作を受賞後、2013年より「ヤングマガジン」にて『デスペナ』(原作:押川雲太朗)でデビュー。代表作に『生贄投票』(原作:葛西竜哉)、『寄生列島』など。現在は「マガポケ」にて『人間消失』を連載中。
https://twitter.com/wdogawa
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