メイクは女性の人生に深く関わってくるもの。ほとんどの女性が一度はコスメにふれる機会があります。清潔感や信頼、自己満足などメイクをする目的は現代では多様化していますが、18世紀の貴族社会では、男性の気を引くための役割が強かったようです。でも、その女性自身の美しさを表現できていたかというと、ちょっと違っていたのかも。4巻が10月7日に発売された『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~』は、18世紀フランスでのメイクと女性の人生がテーマです。

主人公は化粧品開発部で着実にキャリアを積んでいる女性社員・琉花。彼女は衛生薬学を学んでいた大学生の頃、同級生から「女なんだから化粧くらいしたら?」と言われたのをきっかけに、化粧品の世界の虜になったのでした。理系の彼女が気になったのは、パッケージ裏の成分。

不思議⋯
このお姫様の世界に
ゴリゴリした最先端科学と技術がパンパンに詰め込まれているんだ

 

それから数年。琉花は化粧品メーカーで「ヴィクトワール」というブランドの開発者として社内では有名に。チームの責任者に抜擢された時、彼女はこのブランドに込めた思いを語ります。

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琉花は、彼女を開発者としてではなく「知の女神」と呼び、やたらと女性扱いをしてくる部長の男性が嫌でたまりませんでした。たとえいくらイケメンであっても。

「すべての女は俺が誘えば喜ぶ」といった態度の部長とフランス・パリへ行くことになり、その道中も口説いているかのような言葉がたびたびあり、「これはセクハラだ」とうんざりしていた琉花。部長と同じホテルにいることが耐えられなくなった彼女は、部屋をキャンセルしてホテルを出て行くのですが、出口とは別の廊下に向かってしまいます。

怪しげな扉を開けるとそこは18世紀のフランスの街中! なんと彼女はタイムスリップしてしまったのです。
困惑しつつも路頭に迷った彼女が頼れるのは持っていたスーツケースにある「ヴィクトワール」の化粧品のみ。空腹になった琉花はパンを売る女性にある提案を持ちかけます。

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シミが消え若々しくなる様子を見ていた自称「フランス一の髪結い師」という男・レオナールに「ヴィクトワール」の化粧品とメイク技術で、共に女性たちを美しく見せようと誘われます。

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女性の髪を美しく飾りあげるレオナールは、18世紀フランスの貴族社会では当たり前だった”不自然”なメイクを全否定しました。

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貴族になることを目指す彼と組んで琉花はメイクを必要とする女性たちに「東洋の魔法使い」としてメイクをするマキユーズ(化粧師)になります。

18世紀フランスの女性たちは恋愛も自由も結婚してからがスタートで、結婚をするためには美しさが求められていました。右頬の痣を消したいという13歳の貴族の姫君もその一人。

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50過ぎの男爵との結婚を本心では望んでいないけれど、貧しくなった家を助けるため断れないと言う姫君。琉花は彼女にメイクをした後、あるものを渡します。女性がまだ自由ではなかった時代、メイクは自分のためではなく、男性のためにする行為だったのです。

また、琉花が開発者ならではの知識で18世紀フランスのメイクを解き明かしていく様子も描かれます。口紅しかつけていないと答える「白塗りお化け」の奥様の悩みはくすみと黒ずみ。

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琉花が気になったのは奥様の口紅。その何が問題だったのか。当時は毒性がある成分でも美しく見えるならば平気で肌につけていました。皮膚に塗るものが多かれ少なかれ人体に影響を与えるという考えがなかったのです。現代で私たちが当たり前に使っている化粧品は、琉花のような開発者が研究を重ねて、安全性と美を両立させた結果なんだな、と思わされます。

沢山の歴史上の有名人と出会い、メイクで彼らの人生を幸せに導いていく琉花。2巻ではルイ15世とその公妾であるデュ・バリー夫人が登場し、マリー・アントワネットと琉花が出会うことも予感させます。琉花は彼女たちにどんなメイクをし、現代の日本女性としてどんなメッセージを伝えるのでしょうか。歴史のうねりに巻き込まれていく彼女のこの先が気になる作品です。

 

【漫画】『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師」第1巻を試し読み!
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『ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師』

みやの はる (著), 堀江 宏樹 (企画・原案, 監修)

化粧品の開発部に勤めるルカは、恋愛には奥手ながらも仕事では成功を収め、周囲にも認められつつあった。そんなある日、老舗ブランドとの新商品開発のため、フランスに向かったルカは、ホテルの奥地に迷い込んだところから18世紀にタイムスリップしてしまう――!手持ちの武器は自身が作った化粧品のみ。激動の時代を知力で生き抜くアラサー女子のタイムスリップ浪漫、開幕!!

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作者プロフィール

漫画:みやのはる

漫画家。4月生まれ。KADOKAWAコミックブリッジにて
「ラ・マキユーズ~ヴェルサイユの化粧師~」を連載。
Twitterアカウント:@miya_seno

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原案・監修:堀江宏樹
歴史エッセイスト。偉人の素顔、スキャンダラスな史実を綿密な考証、現代的な視点で紹介する著書多数。


©みやのはる,堀江宏樹/KADOKAWA
撮影:矢島泰輔
構成/大槻由実子
編集/坂口彩

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