「マンガ大賞2020」で3位にランクイン、そして現在ではTVアニメ化も絶賛進行中で、ここ数年じわじわと注目を集めている『スキップとローファー』。

青春学園モノながら、本作で描かれるのはスポ根でもラブコメでもなく、思春期特有のヒリつくような痛みや青春時代の輝き。そんな人間ドラマとしての一面が強い『スキップとローファー』は、大人になった私たちも心に留めておきたい、大切なことを教えてくれます。


超田舎育ちの少女が東京のJKに!


石川県・能登半島の端っこに位置する超田舎から、東京の進学校へ主席入学した主人公・岩倉美津未(いわくら みつみ)。

 

新天地でのやる気、意気込み、おまけに学力も十分! 大きな野望と希望を持って入学式へと向かう美津未ちゃんですが、慣れない都会の空気にやられて、通学途中にダウン。そんな彼女の様子を心配して声を掛けてきたのが、イケメン男子・志摩聡介(しま そうすけ)でした。

 

後に同じクラスであることが発覚する志摩くんの助けもあり、無事学校へと到着した美津未ちゃんですが、自分の理想とは程遠い高校生活のスタートにひどく落ち込みます。

 

さらには、天然な性格と過疎地育ちによる同世代とのコミュニケーションの乏しさから、入学早々周りから浮いた存在に……。こうして、なんだか心がざわつく美津未ちゃんの東京JKライフが幕を開けるのです。

 
 


痛いほど懐かしい“嫌な自分”を思い出す


第一印象でクラスメイトを判断したり、スクールカーストを意識して友達を選んだり……。学生時代にそんな“嫌な自分”を内に宿していませんでしたか?

 

『スキップとローファー』には、思い出したくない、けれどきっと誰しもが持っていたであろう“嫌な自分”の一面が、美津未ちゃんのクラスメイトを通して細やかに描かれています。

こちらは、美津未ちゃんの後ろの席に座るミカちゃん。

 

この絶妙に含みのあるというか、性格の悪さを感じさせるミカちゃんですが、この後クラスの人気者である志摩くんと美津未ちゃんが友達だと知ると、この変貌っぷり……。

 

『スキップとローファー』には、典型的ないじめっ子や不良などは一切登場しません。けれど、ミカちゃんのように思春期特有の絶妙な性格の悪さを感じるクラスメイトが多々登場するのです。

 

対する美津未ちゃんは、そんなクラスメイトたちとどのように接していくのでしょうか。

空気を読む? 媚びへつらう? ……いや、美津未ちゃんは何があってもそのままで変わらないのです。

 
 


美津未ちゃんをきっかけに変化していくクラスメイト


そう、『スキップとローファー』とは、超田舎育ちの少女が東京に同調していく上京物語ではなく、美津未ちゃんをきっかけにクラスメイトたちが変化していく姿を描いたお話なのです。

 

例えば先ほど登場した、絶妙な性格の悪さを見せるミカちゃん。彼女は美津未ちゃんと関わっていくうちに“嫌な自分”と、その根っこにあるトラウマと向き合い、次第に素直だった頃の自分を取り戻していきます。

 

また、何かと美津未ちゃんを励ましてくれる志摩くん。彼が美津未ちゃんを助けているように見えるけれど、実はその逆。とあるトラウマによってどこか人生諦めモードだった志摩くんですが、美津未ちゃんと関わることで高校生活に期待を抱くようになるのです。
 

他者との関わりが自分を形成していく


心の中に潜む“嫌な自分”も人生諦めモードな俺も、生まれた時から備わっているのではなく、その時々の他者との繋がりによって形作られたもの。

美津未ちゃんと関わることで、そこから新たな自分の一面や本来の自分に気付くクラスメイトたちを見ていると、自分とは他者との関わりによって形成されるものだという、人間関係における普遍的なメッセージを感じます。

さらに、どこまでも真っ直ぐな美津未ちゃんという存在。彼女の愛情のこもった体当たりなコミュニケーションは、楽しいことだけではなく、時には軋轢も生み出します。ですが、その先に彼女が手にする友情、信頼、そして青春時代ならではの輝きは、人との繋がることの尊さを私たちに教えてくれます。

年齢を重ねると、新たに人間関係を築くことが億劫になりがち……。でも、その新たな繋がりが、『スキップとローファー』のミカちゃん、志摩くんのように、自分の知らない自分を知るきっかけになるかもしれません。
 

 

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『スキップとローファー』
高松美咲(著)

岩倉美津未、今日から東京の高校生。入学を機に地方から上京した彼女は、勉強こそできるものの、過疎地育ちゆえに同世代コミュ経験がとぼしい。そのうえちょっと天然で、慣れない都会の高校はなかなかムズカシイ! だけど、そんな「みつみちゃん」のまっすぐでまっしろな存在感が、本人も気づかないうちにクラスメイトたちをハッピーにしていくのです。


<作者プロフィール>
高松美咲

アフタヌーン四季賞2012年秋のコンテスト『箱庭のこども』佳作入賞を経て、集中連載『カナリアたちの舟』(全①巻)にてデビュー。「アフタヌーン」2018年10月号より『スキップとローファー』連載開始。