「奥さん込み」で関係してくる篤郎という男性に、いつしか慣れっこになってしまった


1966年春、作家の長内みはる(寺島しのぶ)は、ある講演会で作家の白木篤郎(豊川悦司)に出会います。みはるには同居するパートナーが、篤郎には妻・笙子(広末涼子)や娘がありながら、男女の仲になっていくふたり。自由奔放で平気で嘘を付く篤郎ですが、そんな彼にみはるはのめり込んでいきます。一方の笙子は、篤郎にはみはる以外にも女性がいるのを把握していますが、表面的には静観しているようです。そんな危うい3人の関係性は、時の流れとともに少しずつ変容していきます。

篤郎という一人の男性を挟み、愛人であるみはると妻の笙子は、お互いを意識せざるを得ない関係性。演じるおふたりはどのような気持ちだったのでしょうか?

 

寺島しのぶさん(以下、寺島):私は意識せざるを得なかったです。なぜなら篤郎さんが会うたびに、「女房が編んだマフラーなんだよ」とか、必ず女房が、って付けてくるんですよ! 「奥さん込み」なのが一種のプレイみたいなもので、そこは慣れっこになっちゃって。流すようにしているうちに、嫉妬を超越して最後のほうは全然気にならなくなっていって。それって面白い現象だと思いました。でも、実際に毎回「女房が……」っていう男だったら、本当に嫌だな(笑)。だったら来るなよ、って思います。

 

広末涼子さん(以下、広末):私は意識しないようにしていました。実際には見ていないし知らないことだから。篤郎さんがいろんな女性と付き合っているのも、笙子は時代的にも職業的にも、芸の肥やしのようなものと受け止め、意図して感情を持っていかれないようにして日常を過ごしていたと思います。でも、一度だけ気になって撮影中に篤郎さんとみはるさんの場面の台本を読み返してみたら、こちらと違っていつも楽しそうなんですよ! 一緒にクリスマスにケーキ食べたりして。うわ〜、いいな〜って(笑)。でも、考えないようにしていました。