繊細でキレ味のいい職人技が
石の無垢な美しさを洗練させる


赤地さんは、その後集めてきた宝石を企画展などで販売し始めました。その時に、原石を使って自分用にピアスを作って身につけていたところ、それが徐々に会場に来る人たちの人気を集めるように。ジュエリーを作るようになったのは、作って欲しいという周囲の人の声に後押しされてのことでした。

原石を生かしたジュエリーはその頃は特に珍しく、石をカットして整えてジュエリーに仕上げるのが一般的。でも赤地さんが好きなのは、幼い頃から一貫して石が持つ表情そのもの。

「宝石は地球からの贈り物。私にとって原石って完成されたアートピースなんです。だから整えてしまうと、どこかよそ行きというか、個性がなくなってしまう気がして。私がジュエリーを作るなら、できるだけ自然のままの形を生かしたかったんです」。

50歳で出会った「ロックリング」。天然の宝石をジュエリーに仕上げるアトリエを訪ねて_img0
赤地さんがこよなく愛するマラヤガーネット。タンザニアで採取されるのだとか。「原石は無垢。色も形もそれぞれ個性があって、1つとして同じものがありません」と赤地さん。買い付けを始めたての頃、選んだ石を宿泊先の枕の上に並べ、ただ眺めているだけで幸せだったというお話も印象的でした。

原石を最大限に生かしたい。そしてパーツは個体差にも対応でき、さらにブランドとしての美意識も重ねたい……。そんな着地点を模索している最中、抱えていた案件でサファイアに特別な加工を施してもらえる高度な技術を持っている職人さんを探していたところ、たまたまヒットしたのが山梨県の「詫間宝石彫刻」でした。

 

「とりあえず送ってください、って。びっくりしたのですが、送ってみたら完璧に仕上げて送り返してくださったんです。腕の確かさに感激して、それからですね。詫間さんたちと出会えて、ようやくbororoが実現したんです」と赤地さん。

50歳で出会った「ロックリング」。天然の宝石をジュエリーに仕上げるアトリエを訪ねて_img1
11月の石、インペリアルトパーズ。みずみずしくて透明感のある柔らかな色味、横長でひし形のフォルムが顔まわりをぐっとモダンに。そして実際に手にして驚いたのが、石と見事な一体感を生んでいるピアスポストのとても精密で繊細な作り。その細部へのこだわりが有機的な石をぐっと洗練させている気がします。

「無理なお願いをたくさんしているんですよ、本当に。でも、その度に職人魂に火がつくというか(笑)。 私も山梨県の工房にも何度も行っていて、その場でああでもない、こうでもないって、まさにセッションです。でも、本当に素晴らしいんです。目を見張るような特別な職人技で、私のイメージをはるかに上回るような見事な仕上がりを実現してくださるのだから。赤地さんのお願いだから、仕方ない。でも他の人たちに、僕たちならできるよって言わないでね! 簡単じゃないんだよーって念を押されてますけどね(笑)」。

50歳で出会った「ロックリング」。天然の宝石をジュエリーに仕上げるアトリエを訪ねて_img2
カラフルな誕生石のネックレスとピアス。無垢な原石を華奢なゴールドのあしらいがさりげなく華やがせて。

原石のきりりと洗練され、あるいはどこか優美でエレガントな佇まいを実現したbororoのジュエリー。それは、赤地さんの思いと伝統工芸士さんたちの卓越した職人技が見事に重なり合って形になったもの。赤地さんの情熱と詫間さんの情熱が、そのジュエリーをさらに特別なものにしているのです。


次回は、私も愛用している「ロックリング」にフォーカスし、ものづくりの背景に迫ります。また他のbororoのラインナップについても赤地さんのお話とともにお届けします。
 

50歳で出会った「ロックリング」。天然の宝石をジュエリーに仕上げるアトリエを訪ねて_img3
 

(奥)赤地明子さん:ニューヨークにて宝石学を学んだ後、美しい宝石を求めて世界中を旅する。コロンビア、ブラジル、ドイツ、タンザニア、スリランカ、タイなど世界各地の宝石産地や市場に独自のコネクションを持つ。

(手前)松井陽子(まついようこ):ファッションエディター&ライター。湘南在住。雑誌やカタログ、広告など広いジャンルで活躍中。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。Instagram: @yoko_matsui_0628


撮影/目黒智子
構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/bororo
 

50歳で出会った「ロックリング」。天然の宝石をジュエリーに仕上げるアトリエを訪ねて_img4
 


前回記事「スローンの名品Tシャツは、リーバイスのデニムと同じ。私のスタイルの定番に」はこちら>>

 
  • 1
  • 2