好きな物事やライフスタイルがブレない一方で、新しい流行や情報も積極的に追いかけ必要に応じて取り入れる柔軟さも持ち合わせている、漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さん。長年、第一線で活躍されていますが、昔からちっとも変わらない、肩の力の抜けた自然な若々しさに、お会いする度に密かに驚愕させられます。多くのアラフィフ女性がぶち当たるであろう「そんなつもりなくても迫力出てしまう問題」とも無縁そうです。

本連載ではなめ子さんが自らのアンテナに引っかかった事象を紐解く過程をコラム+漫画の形でお届けすると同時に、「アラフィフの壁」を無理なく、軽やかに越えるヒントを読者の皆様に与えられれば幸いです。前回に引き続き、大相撲9月場所をなめ子さんが独自の視点でレポートします。

神聖な土俵入りの場面。歴史の重みを感じます。


「メッセンジャーRNAのモデルナ」の懸賞旗に注目


東京・両国国技館で行われた9月場所の8日目。朝9時15分から取組が行われていて、最初は「序ノ口」の力士から始まり、「序二段」「三段目」「幕下」「十両」、そして「幕内」と呼ばれる「前頭」「小結」「関脇」「大関」「横綱」と、時間を追うごとに番付が高まっていきます。1日いったい何百人の力士が土俵で肉体を交えるのか、「本日の取組表」を見ても数えきれません。1回ごとに塩をまいて邪気を祓っているからこそ、朝から夕方まで清々しい空気の中、取組が行えるのでしょう。

通路脇は間近で力士の入退場が見られるのでおすすめかもしれません。

この日は、幕内力士が登場する「中入り」から集中して観戦しました。幕内以降は、企業などが応援している力士の取組に「懸賞」をかけることができます。懸賞を出すと、土俵上で呼出の人が懸賞旗をかかげてくれて、社名などが呼ばれるので、宣伝効果があるとのこと。(賞金は1本70,000円、1場所15日ぶんで1,050,000円という、大企業は気軽に出せそうな価格設定)。ちなみに大相撲の呼出も密かに注目されていて、イケメン一覧というサイトもありました。土俵マジックと装束でかっこよく見えます。ただ一瞬しか顔が見えないのに、イケメンかどうか判別できる人の動体視力はすごいです。

 

今回気になったのは「モデルナ」が懸賞を出していたこと。年配の観客にモデルナへの親近感を与え、ワクチン予約につなげる効果がありそうです。ちなみにキャッチフレーズは「メッセンジャーRNAのモデルナ」でした。赤いカタカナのロゴ入りがかわいいですが、日本社会に入り込もうとする戦略的な意図も感じます。

一瞬だけ出される懸賞旗。モデルナの赤いロゴが目立っています。

他にも「地元でハケン ホットスタッフ」「伊勢のやさしいお福わけ お福餅」「ハッピーライフタマホーム」「人も地球も健康に、ヤクルト」「植物を超元気にするHB-101」など、様々な企業が懸賞に参加。「味ひとすじお茶づけ海苔の永谷園」「さけ茶づけの永谷園」「梅干し茶づけの永谷園」と、企業が一度に複数本懸賞を出し、観客に刷り込むパターンも。永谷園などは後半の取組に出して、観客が空腹になる時間を狙ったかのようです。ほとんど全ての取組に懸賞がかかる中、何もない取組もあって、もし自分が力士ならモチベーションが下がりそうです。「正代-大栄翔」「照ノ富士-錦木」に多くの懸賞がかけられていました。

 
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