とどまることを知らない韓国ドラマブーム。
当記事は、韓国料理エッセイストでもあるライター・小澤サチエが、韓国俳優やドラマの魅力を語ります。
9月から10月にかけて放送された韓国ドラマ『シスターズ』。最終回を迎えてから1ヶ月近くが経つにも関わらず、Neflixの日本ランキングでは、いまだに上位にランクインし続けています。
貧しい家庭で育ちながらも、仲睦まじく生きてきた3姉妹が、突然700億ウォン(約70億円)という大金を手に入れたことをきっかけに、恐ろしい陰謀に巻き込まれていくというミステリー。
『トッケビ』のキム・ゴウンをはじめとする、豪華俳優陣の高い演技力に加え、緻密に練られたプロットは、大どんでん返しの繰り返し。鳥肌が立つようなストーリー展開は、常に視聴者の予測の斜め上を行き、「回を追うごとに面白くなる」と話題になりました。
当記事では韓国ドラマ『シスターズ』がさらに面白くなるポイントを解説します!
※当記事は、作品の内容に関わる記述を一部含みます。
『シスターズ』と『若草物語』の共通点探しが面白い!
韓国語学習中の私は、韓国ドラマを観始める時は必ず、日本語タイトルだけでなく韓国語タイトルをチェックするようにしています。直訳タイトルではないこともけっこう多いので、勉強になるんです。
『シスターズ』も同様に、本国・韓国語版タイトルは全く別のもので、直訳すると『小さなお嬢さんたち』という意味なのですが、世界的な名作『若草物語』と同じタイトルなのだとか。
『若草物語』は、19世紀後半のアメリカを舞台にした小説で、言わずとしれた名作ですよね。子どもの頃、世界名作劇場のアニメが好きだった人も多いのでは? 実際、『シスターズ』脚本家のチョン・ソギョンは、若草物語の姉妹たちが、現代の韓国に生きていたら……? という発想から、本作品を企画したそうです。
「えっ、どこが若草物語なの!? 全然違う……」と思った方も多いかもしれません。ところが実は、『シスターズ』を観ていると、たくさんの設定やシーンに、『若草物語』へのオマージュを発見することができます。
まずは、ドラマ冒頭シーン。物語は、三女イネのお誕生日を姉妹でささやかにお祝いするシーンから始まるのですが、『若草物語』冒頭の、ささやかなクリスマスを彷彿とさせます。姉妹たちのキャラクター設定も、『若草物語』からの着想を得ているよう。
華やかな世界に憧れを抱く長女インジュはメグ、正義感の強い次女インギョンはジョー、優れた絵の才能を持ち、実は野心家の末っ子イネはエイミー……。
安物靴を履いていたインジュが先輩のおさがりの高級靴を嬉しそうに履く姿は、慣れない靴やドレスで舞踏会に出かけるメグのようでしたし、自分の鼻にコンプレックスを持つイネが「鼻の整形手術をしたい」と言うシーンは、鼻に洗濯バサミをつけて鼻を高くしようとするエイミーを思い出しました。
しかし現代韓国版ならではのスパイスが、あらゆるところに加えられているのも面白いです。『若草物語』では、戦争のために父親が不在なのですが、『シスターズ』では借金を抱えて逃げてしまったが故に父親がいません。
さらには、『若草物語』のマーチ家には、優しくて愛情溢れる母親の存在が欠かせませんが、『シスターズ』の母親は正反対。『若草物語』では4姉妹がお金を集め、母親のためにクリスマスプレゼントを用意する微笑ましいシーンがあったのと対照的に、『シスターズ』では、長女と次女が誕生日プレゼントとして貯めた妹のお金を、母親が持ち逃げしてしまうのです……! なんてダークな若草物語……!
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