「誰を父親に選べばいい?」


「誰の子どもを妊娠すればいいのか。これは本当に悩みました。昔からの友達にも散々相談して、真剣に考えたんですよ」

一応婚姻関係は続いているご主人と、楽しく交際している男性。あるいは、今度こそきちんと家庭を築けるような新規の男性を探すのか。

ちなみに息子さんに弟を作ってあげるということ自体は、麻里さんはさほど迷うことはなかったそうです。

「息子がそこまで兄弟を欲しがるなら、単純に叶えてあげたかった。息子は手がかからないまでに成長したし、幸い私の仕事も前より落ち着いたので、また少し気合を入れて1人で2人育てればいいと思って。それに、夫は家族として機能しておらず、いつか離婚する可能性も十分にある。なら、息子と2人よりももう1人家族がいた方が楽しいじゃないですか。

でも、やっぱり問題は父親。できるなら、育児や家庭のことを真剣に考えてお互いに支えられるパートナーが欲しかったですよ。でも、私に男の人を見る目がないことは十分に痛感していたので……。離婚して新しい人を探して妊娠するのも時間とコストがかかりすぎるし、当時の彼も結婚や父親に向きではない男。私の年齢もあるし、結論、ただ精子が欲しいだけなら夫が一番無難だと思いました。

夫に頼らないと決めているとはいえ、万一私に何かあったとき、子どもたちの父親が同じだったら少しは安心だから」

一般的には少々規格外な思考かもしれませんが、麻里さんの言葉には説得力と力強さを感じました。何より、彼女にとっての最優先事項は息子さんで、彼にとって最善な環境を与えてあげたいという母性が伝わります。

「一度は不倫もしたけど...」愛のない夫と“人工授精”で第2子を産んだ妻の、恐ろしい策略_img0
 

「ただ、2人目を作ろうと思っても、夫とはどうしても男女関係になれなくて。泥酔すればどうにかなるだろうと頑張っても、本当にできなかったんです。

さっさと人工授精したいけど、夫に協力させるのも一苦労なはず……と思っていたんですが、『息子が弟を欲しがってるから、“産み分け”に挑戦したい』と言ってみると、意外にも大して抵抗することなく承諾したんです。ここにきて、夫の意思のなさが吉と出ました」

そして麻里さんは、なんと思い通り、早々に男の子を妊娠したのです。男女の“産み分け”を専門としている婦人科に通い、人工授精1回で成功したそう。まさに行動力の賜物です。

ちなみに付き合っていた男性はどうなったのか……? と聞くと、あっさり会わなくなったと言います。気持ちも一時的なもので、すっかり冷めてしまったそう。

「2人育児はそれなりに大変ですけど、2人目の方がお世話はだいぶ楽に思えましたし、小学生の長男も手伝ってくれます。何より次男が可愛くて、産んで本当によかった。

夫は相変わらずシッター感覚で家にいますが、次男が産まれた今となっては、もう本当に要ナシですね。いつ離婚しても大丈夫」

明るい声で語る麻里さん。とはいえ、生活費を半分入れているご主人がいなくなったら実際は困るのではないでしょうか?

「まあ、生活レベルは少し落とすことになるでしょうね。でも都心から少し郊外に引っ越す程度なので、全然構わないです。

ただ、別に他に結婚したい人がいるわけでもないので離婚を急いでもいません。でもいずれにせよ、近いうち夫は仕事の都合で転勤しそうなんです。そうなったら、家族3人で暮らせるのが本当に楽しみ」

最後に麻里さんはそう言って、ニッコリ笑いました。

家庭事情をあっけらかんと語ってくれた麻里さんですが、しかし、ご主人を家族から切り捨てるのも、次男を出産されるのも、並々ならぬ覚悟があったのだと思います。

ちなみに夫婦関係が破綻していても、麻里さんはお子さんの前で喧嘩をしたり、ご主人の悪口を言うことはしないよう注意していたと言います。広告代理店での激務をこなしながらも、お子さんのことは第一に考え、育児に妥協なく向き合っている印象がありました。

一見は驚いてしまう話ですが、しかし常識やルールに囚われていたら、経済的に自立しておらず、何より強い精神力がなければ……麻里さんはこの選択をすることはできず、ご長男の願いを叶えることはできなかったでしょう。

女性として、母としての麻里さんの強い生き方は、非常に興味深かったです。


取材・文・構成/山本理沙
 

 

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