作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。
今回お話を伺った麻里さん(40歳・仮名)は、「何もしない夫」に完全に愛想を尽かし離婚を考えたものの、夫が反対したため「卒婚」(戸籍上の婚姻関係は残したまま夫婦お互いが自由に生活すること)を提案。その後は婚外恋愛もしたそうですが、最近、なんと冷え切った関係のご主人との第二子を出産しました。実は妻には、夫の知らない策略があったのです……。
職業:会社員
家族構成:既婚、2児の母
愛のなくなった夫と、人工授精で第二子を出産した妻
ーー実は妊娠していて、今はお酒が飲めないんです。
去年、麻里さんにそう告げられたときの衝撃は忘れられません。というのも、その少し前、彼女は「もう夫とは離婚する」と宣言しており、実は他に付き合っている男性もいました。
「え、誰の子どもですか?」思わずそう聞いてしまうと、麻里さんはクスクス笑いながら「旦那の子ですよ」と答えたのです。
麻里さんは20代でご主人と結婚し、その後すぐに第一子の男の子を出産。豪華な結婚式やハネムーンを経ての新しい家族の誕生は、まさに幸せな家庭そのものに見えましたが、その後待ち構えていたのは“産後クライシス”でした。
麻里さんご夫婦は完全に共働きであったにも関わらず、長男の乳幼児期にご主人のサポートがほとんど受けられず、妻の気持ちは完全に冷めてしまったのです。
ここまではよくある話とも言えますが、しかしそこから、麻里さんは10歳差で第二子の男の子を出産されました。
てっきり夫婦関係が回復したのかと思いきや、彼女は笑顔のまま答えました。
「まったく回復なんかしていません。むしろ下降を続けてますよ。だからこそ、2人目を産んだんです。夫は家族として機能していないし、カウントしてません。いつ離婚してもいいし、いなくなってくれて構わない。だから息子と2人きりより、もう1人家族が増えた方が楽しいと思って。
でも……当時、夫とはどんなに泥酔しても男女関係になれなかったので、人工授精で妊娠しましたけど」
茶化すような口調でそう語る麻里さん。
しかし詳しく聞くと、関係が冷め切ったご主人と第二子を産むと決めた覚悟と計画は非常に興味深いもので、それは母親としての、究極の選択とも思えました。
Comment