作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回検証するのは「医者と結婚すること」に執着した女性と、内科の開業医のご夫妻。

「スペックありきの結婚」を成功させた女性の、予想外の結婚生活とはどのようなものなのでしょうか?

「医者になるか、医者の嫁か」母の狂気が娘を呪う...医者婚に執着した彼女の奇妙な婚活_img0
 
取材者プロフィール妻:凛子さん(仮名)36歳、専業主婦、東京近郊在住
夫:高志さん(仮名)46歳、内科の開業医

  
 

医者か、それ以外か。母の呪縛


「小さい頃から、『医者になるか、医者と結婚するか、人生は二択よ』と呪いのように母から刷り込まれてきました。事実、4兄弟のうち上の3人は医者と歯医者です。私だけ医学部を受験するほどのレベルにはならず、母から第二の作戦司令が下りました。医者とお見合いで結婚するために、大手企業の一般職が聞こえがいいだろうという親の目論見で就職先も決まりました」

四国の名家に生まれた凛子さん。代々、男性の親族のほとんどが医者、女性も医者か開業医の家に嫁ぐ人ばかりという相当特殊なご実家というから驚きました。

現在は東京近郊で開業医のご主人と、そのご家族と2世帯住宅で暮らしています。クリニックはご自宅の1階とのことで、念願の「医者の妻」という目的を果たされたご様子。しかし、それまでの「道のり」も、「結果」も、順風満帆ではありませんでした。

「医者と結婚しろというのは、母なりの『凛子だけ親族や兄弟のなかで生活レベルが変わってしまうのは不憫だ』という親心もあるようでした。ただ、視野が狭いというか、それしか方法がないという狂気にも近い思い込みは、田舎の古い家だからでしょうか。

そして私も、医者の裕福な生活や特権を語られるうちに、自分もそんな結婚がいい、お金だけじゃなくて、地位も名声も手に入る方法なんだ、と安易に考えて、次々に勧められるままお見合いをしていました」

そのまま結婚となればある意味スムーズだった凛子さんの人生。しかし、予想もしない「問題」が立ちふさがります。