地域住民が集う認知症カフェの良さ


介護には不安がつきものですが、特に認知症発症となると、その不安はさらに大きくなります。そこで、同じ境遇に置かれている人々が集い、愚痴を言い合い、情報を交換できる場として、家族会と呼ばれるものが開催されています。しかし家族会は、介護を終えた人が主導しているケースも多く、参加が半強制となると重荷になる可能性も出てきてしまいます。

そこで活用したいのが、認知症の人や認知症患者を支える家族が集まる「認知症カフェ」です。カフェという名称ですが、約半数が介護・医療関係の施設で行われており、地域の飲食店で実施されているのは1割以下。認知症カフェは自由に開設することができ、認知症の人とその家族、地域の人、専門職が集う場であること以外は、特に設置基準などは設けられていません。

会には介護や医療の専門家が参加することもあり、会話を楽しむだけでなく、介護相談なども可能です。参加費用もリーズナブルで、中には無料のところも。開催日は平均して月に1、2回と少なめですが、気軽に行けるので、今回の相談者・美和子さんのように社会との接点を求めている方にはお勧めです。認知症カフェは2018年度末時点で全国に7023カ所あり、うち3割近くは介護サービス事業者が運営しています(厚生労働省調べ)。

 

どこに行けば良いか分からないという方は、「希望エリア+認知症カフェ」とネットで検索するだけで該当施設をピックアップできますし、6000カ所以上の認知症カフェ情報が紹介されている「全国認知症カフェガイド on the WEB」なども活用してみてください。

 


介護勉強会は格好の情報収集の場


認知症患者のご家族には、地域で実施されている介護の勉強会もお勧めです。たとえば神奈川県川崎市では、地域の主婦が「40〜80代 介護の勉強会」と銘打った企画を立ち上げました。

2022年9月にスタートした全6回の勉強会で、毎回テーマに合わせた講師のレクチャーがあり、参加者同士が話し合うことで悩みや不安の解消を図ります。回数も決まっているため、エンドレスになる心配もなく、美和子さんのご家族のようにこれから本格的に介護が始まる方には、情報収集の場としても活用できます。
 

地域包括ケアシステムとは


今回紹介した認知症カフェや介護の勉強会などは、すべて地域がベースとなって行われています。その土台となっているのが、高齢者の生活を地域で支える「地域包括ケアシステム」です。

地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向けて、厚生労働省が推進している取り組みのこと。要介護者が加速度的に増えることが予測される中、その受け皿である高齢者施設の開設が追いつかないため、できる限り高齢者が住み慣れた地域で介護を受けられるよう、地域ぐるみで在宅介護を推進するという目的で始まりました。

高齢者の在宅生活は、生活の基盤となる「①すまいとすまい方」「②介護予防・生活支援」と、「③医療・看護」「④介護・リハビリテーション」「⑤保健・福祉」という専門的なサービスが相互に関係し、連携することで成り立っています。そこで地域包括ケアシステムでは、これら5つのサービスを分断して考えず、「市町村や都道府県が、地域の特性に応じてトータルで提供する」としました。地域包括ケアシステムが整えば、在宅介護は難しいと思われていた高齢者の多くが退院し、リハビリ施設などを経て再び自宅で生活できるようになることでしょう。

政府は必要なサービスを30分以内で提供できる範囲を1つのエリアとして想定しており、各地の地域包括支援センターがその拠点となります。地域包括支援センターは地域の高齢者の相談窓口で、地域包括支援システムの要と言えます。2021年4月末時点で全国5270カ所に設置されており、支所を含めると7305カ所にのぼります。

地域包括支援センターに行けば、そのエリア内で行われている介護の取り組みが分かります。ぜひ皆さんの親が住む地域の活動にも目を向けて、介護に活用してみてください。
 


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 

 


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