食品の説明に潜むカラクリに気をつけて【医師の解説】


編集:よい面があることもわかりましたが、動脈硬化に繋がると聞くと、牛乳を控えようかな……と考えてしまいます。

 

山田:先ほどのような説明は非常に多いのですが、実はこうした説明には、少し注意が必要です。

こんな説明を加えてみましょう。実は牛乳には、リノレン酸と呼ばれる不飽和脂肪酸が比較的多く含まれている、ということも知られています。不飽和脂肪酸には、悪い脂肪酸の働きを抑え、血管を保護してくれる働きが知られています。このリノレン酸を摂取することによって、血管が守られる、すなわち動脈硬化を防ぐことができるとも考えられているのです。

編集:動脈硬化を防ぐことができるのですか? はじめの説明とは違いますね。

山田:はい。このように、同じ食品ですが、説明の仕方によって、その食品のイメージを、よくも悪くも印象づけることが可能なのです。

先ほどの説明では、「牛乳には飽和脂肪酸が含まれている。飽和脂肪酸を摂取するとLDLコレステロールが増加し、動脈硬化に繋がると言われている」と、一部の栄養素の話だけを切り抜き、さらに三段論法を展開しています。説得力のある説明に聞こえますが、実際には、A=B、B=Cが成り立つとしても、A=Cは成り立たないことが、日常生活では多いですよね。

前述したように、牛乳には飽和脂肪酸だけでなくリノレン酸と呼ばれる不飽和脂肪酸も含まれています。食品全体ではなく一部の栄養素だけを切り抜いて三段論法を展開している説明には、注意が必要なのです。

編集:そうした説明が使用された食品の広告をよく見かけます。

山田:「牛乳は体によいか、悪いか」という評価に使用できる研究は、一部の栄養素だけでなく、「牛乳そのものを飲んだ人たちが、どんな病気に繋がったか」ということを直接的に評価したものです。それ以外の、あらゆる説明に関しては注意が必要ですね。

実は、「乳製品の摂取と心臓の病気の関連性」を調べた研究がありますので、ご紹介します。