小さい頃から、『医者になるか、医者と結婚するか、人生は二択よ』と母から刷り込まれてきた凛子さん。医者にはなれず、医者と結婚しなくてはと考えるようになります。しかし年下の男性に安らぎを感じる彼女は、年上の開業医とお見合いを重ねるもののうまくいかないまま32歳に。ワインスクールで出会った10歳上の開業医、高志さんとの結婚を目標に定めます。「嫁は若い女医がいい」という高志さんのご両親の反対をかいくぐり、結婚にこぎつけますが、待っていたのは奇妙な結婚生活でした。

前編記事に続き、作家・ライターの佐野倫子が「スペックに囚われた結婚」の問題をレポートします。

「義母が深夜に私を...?」念願の院長夫人になった彼女が目撃する、戦慄の小部屋_img0
 
取材者プロフィール妻:凛子さん(仮名)36歳、専業主婦、東京近郊在住
夫:高志さん(仮名)46歳、内科の開業医

  
 

「院長夫人にふさわしく」ハイブランドで身を固めた


「院長夫人としての生活が始まりました。四国に住む実母も快哉を叫んでいます。夫の高志さんは結婚してみれば少々子供っぽいところもありましたが、お互い様。この頃は、人生の目標を叶えた達成感で、細かいことは気になりませんでした」

3年前の新婚当時を語る凛子さんの様子から、母から刷り込まれた「医者と結婚する」という目標が重いプレッシャーだったことが伝わってきます。長年の鬱屈を晴らすように、凛子さんは新生活を楽しみました。

地方の裕福なご家庭に育ち、しかし社会人になってからは一般職の収入で10年間東京で自活してきたので、その落差にストレスを溜めていたのでしょう。「医者の妻」として恥ずかしくないように、という口実で、身の回りのものをハイブランドで固めはじめます。