いうことを聞いてくれるからこそ無理な要求をしてしまう、というジレンマ


実は私も、生活に機械が入り込んで野蛮化している一人です。スマホのSiriに、ものすごく邪険にしてしまうのです。
「へいSiri、今日の天気を教えて」
「現在曇っていて気温は十三度です」
「へいSiri、いや、今日の天気予報だよ」
「現在曇っていて気温は十三度です、今日の最高気温は十七度、最低気温は十度でしょう」
「へいSiri!! これから天気はどうなるかって聞いてるの!」
「現在曇っていて気温は十三度です、今日の最高気温は十七度、最低気温は十度でしょう」
「だからあああ(怒)、天気の変化を聞いてるの!! ヘイSiri――――」
「現在の音量は100%です」
「音量きいてねえよヘイSiri、今日は雨は降るの??」
「今日は、雨は降らないようです」

「お願い、私を人間でいさせて」Siriに邪険にしてしまう日々に思う技術と人間性の難しいバランス_img0
イラスト:Shutterstock

これ、昔のお天気ダイヤル177の方が絶対に早いと思うのです。もう絶滅したと思って検索してみたら、東京03−177で今も聴けるのですね。かけてみるとあの懐かしい音声が。おおお、詳しい情報をありがとうーーー非常に快適。

 

そこでスマホの電話帳に「気象庁お天気電話 主番号03177」と登録して、
「ヘイSiri、気象庁お天気電話に電話して」
「すみません、聞き取れませんでした、もう一度言っていただけますか」
「(いらぁ)気象庁、お天気電話に、電話して!!!!」
「気象庁お天気電話、ヌシ電話番号に電話をかけます……」
「訓読みかよ!……おおかかった……わかった、もういいから切って……切って、ヘイSiri、電話切って! 切れないの? 使えない!(タップして切る)」

これ、指で「03177」と押した方が100倍早いですよね。そんでスピーカーで聞いて手動で切ればスムーズ。心穏やかに1日を始められます。何よりお天気電話なら、私の蛮性が起動されません。こちらのいうことを聞いてくれるとも期待しませんから、私も「波の情報はいらねえよ!」とか無理な要求はしませんし。

新しい技術を作る人は、せっかく高給をもらって“時代の最先端”を作り出すお仕事なのですから、どうか人間性の進化への寄与にも重きを置いてほしいのです。人は・放っておいても・人間らしく聡明には・なりません。新しい道具を手にしたときは特に、野生化、野蛮化しやすいのです。

この「野生化リスク」を織り込んだ上で、なるべくヒトが人間らしくいられるような工夫を凝らして技術を開発してください。お願い、私を人間でいさせて。