「8020」ではまだ足りない。めざせ「8028」!

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写真:shutterstock

あなたも「8020運動」という言葉をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。これは、「80歳になっても、自分の歯を20本残そう」と、厚生労働省と日本歯科医師会が、1989年から始めた運動です。

大人の歯は、全部で28本が基本です(他にも親知らずが4本ありますが、これは生えてこない人もいるので、基本数に含めません)。このうち少なくとも20本以上自分の歯があれば、 ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、 死ぬまでおいしく好きなものが食べられて、楽しく健康でいられる。そのような趣旨で始められた運動です。

この運動が功を奏して、厚生労働省が発表した2016年調査では、80~84歳の「8020」達成者が51.2%となりました。

認知症専門医である私から見ても、この運動は素晴らしいと思います。ただ、個人的な感想を言わせていただくと、私がクリニックで患者さんたちの口の中を見た印象では、残った歯の数が20本というのは、かなりスカスカの状態です。20本ということは、すでに8本の歯が失われているわけです。

 

例えば、あなたの上の前歯が4本、下の前歯が4本なくなっているところをイメージしてみてください。これって「うわぁ、かなりごっそり抜けてるなぁ」という感じではないでしょうか。こんな状態で食事をして、ものを噛んでも、脳にちっとも血流が回らなそうな気がしませんか?

ですから、本気で脳の老化を防ぎたいなら、そして、全身疾患を予防したいなら、「8020」で満足せずに、もっと高いレベルを目指す必要があります。つまり、「80歳で28本、すべての歯を残す!」という気持ちで、日々の歯みがきを行う必要があるのです。

著者プロフィール
長谷川 嘉哉(はせがわ よしや)さん

●1966年、名古屋市生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会専門医、日本老年病学会専門医。毎月1000人の認知症患者を診察する、日本有数の脳神経内科、認知症の専門医。
●祖父が認知症であった経験から2000年に、認知症専門外来および在宅医療のためのクリニックを岐阜県土岐市に開業。これまでに、20万人以上の認知症患者を診てきて、いち早く認知症と歯と口腔環境の関連性に気づく。
●現在、訪問医療の際には、積極的に歯科医・歯科衛生士による口腔ケアを導入している。さらに自らのクリニックにも歯科衛生士を常勤させるなどし、認知症の改善、予防を行い、成果を挙げている。「医科歯科連携」の第一人者として、各界から注目を集めている医師である。

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『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい!』
著者:長谷川 嘉哉 かんき出版 1298円(税込)

数多くの認知症患者と向き合うなかで認知症と歯と口腔環境の関連性に気づいた著者が、歯周病が認知症、およびその他の病気を引き起こすメカニズムを、エビデンスに基づいてわかりやすく解説します。さらに、歯周病を予防することによって得られる経済的メリットや口内ケアの具体的方法など、予防に付随するさまざまな情報を提供。老後に対する不安を軽減してくれるでしょう。


構成/さくま健太
 

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