気づかないうちに個人情報を収集され、ターゲットにされる人が多い
坂口:ただそういうSDGs的なイベントそれ自体は、悪いことじゃないようにも思えちゃうんですが……。
有田:「街をきれいにするんだからいいこと」とかではないんですね。参加すればターゲットと見定められ、個人情報が収集されてしまいますし。ある一定以上の世代なら「統一教会=霊感商法」とすぐにわかりますが、今は名前も「世界平和統一家庭連合」と変わっているし、若い世代はそもそも何も知らないわけで、そういう入り口から入ってしまう人が多いんですよね。「郷土史の勉強会」とか「街の清掃活動です」とか言われても、気づけないですよ。
アツミ:よく考えたら、オウム真理教も「ヨガ教室」が入口でしたよね。体の不調をヨガでなおしましょう、みたいなところから勧誘するという。
有田:オウムの場合は大学での「インドカレー研究会」とかもありましたね。カレーを一緒に作って食べて、インドについて話しましょうと。要するに、カルト宗教の場合、昔も今も自分たちの正体を言わずに勧誘するのが特徴ですよね。
アツミ:で、その後は「ビデオセンター」「家系図」「セミナー」の流れに?
有田:そうです。ビデオセンターやセミナーなど「もう少し一緒に勉強しましょうよ」みたいな展開になってきた時に、「これはあなたの人生にとって大事なことだから、家族や友達であっても誰にも相談しないでくださいね」と言い含められるのも大きな特徴と言えますね。
我に返るためには、報道を見る、相談する、連絡をとること
アツミ:「冷静に見ると、なんかおかしい」という第三者の言葉で、我に返ったりしないようにってことなんでしょうか。
有田:それもありますが、マジメな人はこう言われると「この人の善意を裏切れない」と思う。向上心もあるから「もうちょっと勉強してみようかな」となって、入信というケースが多いんですよ。
アツミ:お話を聞いていてふと思ったんですが、DV(家庭内暴力)の「支配、被支配」の構造とすごく似ている気がします。例えば夫が妻に暴力をふるっているとして、夫は妻と外部の接触を嫌い、友人関係などを監視するようになっていくことが多いらしいんですよね。その結果として、妻は精神的にも物質的にも「この人がいないと生きていけない」と思わされてゆくと。
有田:オウム真理教では「情報遮断は、グル(教祖)の意志」という言葉がありましたね。とにかく一般の報道なんかは見てはいけない、見ればあなたの認識が歪んでしまいますよ、と。統一教会も同じで「変な情報が多いから、報道は見ないように」と言うんですね。だから「入り口に立っている」くらいの段階でおしとどまるには、その逆をやるのが有効かもしれません。つまり「相談しないように」と言われたら、おかしいなと思ったことを信頼できる人に相談する。
アツミ:「誰にも相談するな」「連絡は取るな」と言われたら、それは要注意のポイントですね。
取材・文/渥美志保
構成/坂口彩(編集部)
有田芳生さん1952年京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経てフリージャーナリストとして活躍。主に週刊誌を舞台に、統一教会、オウム真理教事件等の報道にたずさわる。2007年まで日本テレビ系「ザ・ワイド」に出演。2010年に民主党から立候補し参議院議員となり、拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに積極的にとりくむ。