今年の大きな事件といえば、国葬の是非も大きな議論を巻き起こした、安倍晋三元首相の襲撃事件。事件をきっかけに旧統一教会関連のニュースが盛んとなる中、今注目を集めるキーワード「カルト」を深掘り! 社会派ライターの渥美志保とバタやんの“アツバタ”コンビがお送りしてきた連載「ニュースな言葉」、今回はバタやんに替わりミモレ編集部の坂口がジョイン。旧統一教会の問題に40年ほど前から取り組んできたジャーナリスト・有田芳生さんに、そもそも「カルト」とは何なのかとその問題点、「カルト」はどのように近づいてくるのか、どうすれば「カルト」の被害に遭わずに済むのかについて聞いてみました。前々回、前回に引き続き、三回目です。

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時代とカルト、そして社会はどう対策してきたか


アツミ:新興宗教が勢いを増すのは、時代のあり方とかも関係あるんでしょう? 何か共通点みたいなものはありますか?

有田芳生さん(以下、有田):新興宗教が勢いを増す理由でよく言われるものに「貧・病・争」があります。第二次世界大戦直後の昭和20~30年代はそこから救われたくて、新興宗教に入信する人が多かった。ちなみに創価学会(昭和30年設立)が伸びたのはこの頃です。

有田芳生さん1952年京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経てフリージャーナリストとして活躍。主に週刊誌を舞台に、統一教会、オウム真理教事件等の報道にたずさわる。2007年まで日本テレビ系「ザ・ワイド」に出演。2010年に民主党から立候補し参議院議員となり、拉致問題、差別、ヘイトスピーチ問題などに積極的にとりくむ。

アツミ:比較的最近でも、’80~’90年代はオウム真理教や統一教会だけでなく、幸福の科学とかパナウェーブ研究所とか法の華三法行とか、びっくりするほどたくさんの新興宗教や宗教カルトがワイドショーを賑わせていましたよね。

有田:日本が高度成長を遂げて物質社会が進んでからは、やっぱり心の問題、家庭の問題はあったと思います。オウム信者にもいろんな入信の動機がありましたが、広報の上祐浩史さんは父親不在の家庭で育っており、坂本弁護士一家殺害事件に関与した岡崎一明は親に捨てられ里子に出されていて、麻原彰晃を父親のように思っていたようです。

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坂口:以前「毒親問題」の取材をした時、「高度経済成長期の日本の家庭は父親不在で、子育てを含む家庭の全責任を母親が負うことになり、その歪みで毒親化していった」という話を聞いたことがあります。ひょっとしたらそういう家庭の機能不全も関係あったのかもしれませんね。

有田:統一教会でも文鮮明を「真(まことの)のお父様」と呼びますよね。やっぱり家庭に満たされないものを持っていて、その代替物として宗教にのめり込むということもあるような気はします。上祐さんなんかは「尊師(麻原彰晃)は、自分がいつ何をやらなければいけないかを、的確に指示してくれる」と言っていましたが、指示してくれる存在としての「父性」を求めているんです。

アツミ:「指示してくれる」というのはキーワードにも思えますね。それこそ日本人って「何をすればいいか指示されること」を喜んだり、安心したりするところもあるじゃないですか。自分の頭で考え自分の意思で動き、主張し決断することが苦手というか。「集団の和を乱すのは良くない行為」と教えられて育っているというか。だからそういう部分を、自分の上にある「権威的な存在」にゆだねてしまう人が多いですよね。

有田:そうそう。でもそれは軍隊と同じで、思考停止なんですよね。