今回の暴動は、ニュースで大きく取り上げられたので、多くの人が知ることになりましが、新興国における工場のトラブルは結構な頻度で発生しています。以前の時代であれば、多少、環境が劣悪でも、仕事がないよりはマシということで、こうした工場を積極的に受け入れる国も少なくありませんでした。しかし、社会がある程度、豊かになってくると、労働条件などに対する関心が高くなり、劣悪な労働環境は社会的に許容されなくなります。 

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「フォックスコン」では2012年にも今回と同じような暴動が起きている。超過勤務手当に関する理由から約2000人の従業員が参加し、山西省太原市の工場が一時閉鎖された。写真:ロイター/アフロ

加えて、ここ数年は米国と中国の政治な対立が激しくなり、米中間の貿易を制限する動きが顕著になっています。日本でも安全保障上の理由から、中国への依存度を減らすべきという意見をよく耳にするようになりました。

 

これまで中国は世界の工場として、低コストな製品の生産を一手に引き受けてきましたが、一連の国際情勢の変化によって、中国が今後も、その役割を担ってくれるのかは微妙な状況になってきたと言えるでしょう。

もし全世界に拡大したグローバル経済の仕組みが縮小することになった場合、私たちの生活も大きな影響を受けることになります。

製品の製造を担う従業員に相応の賃金を支払うということになれば、当然のことながら製品価格は大きく上昇します。安全保障上の理由から、調達先を分散したり、国内の製造に切り替えた場合でも、やはりコストが増加しますから、製品価格は上がる結果となるでしょう。

特に日本の場合、賃金がほとんど上がっておらず、諸外国の消費者と比較して購買力が著しく落ちています。ここにグローバル経済の縮小が加わった場合、私たちが買える製品はさらに少なくなってしまいます。

安全保障の問題は外交で解決できる余地がありますが、グローバル化による歪みは、本質的な解決が難しいテーマです。世界の人たちが相応の対価を得る社会を構築しようとした場合、やはり、価値のあるものには相応のお金を払う必要が出てきます。何でも安く手に入る時代は、いよいよ終わりを告げようとしているのかもしれません。
 

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