日本においても物価上昇が顕著になっていることから、従業員に対してインフレ手当を支給する企業が増えています。多くの国民は物価上昇に賃金アップが追いついておらず、実質的に賃金は下がった状態にあります。多くの国民が生活が苦しくなったと感じていますから、インフレ手当は、とりあえずの支援としてはありがたい存在と言ってよいでしょう。

イラスト/Shutterstock

しかしながら、インフレ手当に前向きな企業がある一方で、多くの企業が支給の予定はないとしており企業間での格差が顕著となっています。また、手当てを支給する企業でも、総人件費の拡大につながる賃金のベースアップには消極的で、継続して賃金が上がっていく兆候は今のところ見られません。

 

総務省が発表した2022年10月の消費者物価指数は、前年同期比3.7%の上昇と、近年、稀に見る上昇幅となりました。経済統計を参照するまでもなく、食料品などを中心に商品価格の値上げが相次いでおり、家計の可処分所得は目に見えて減っています。

一部の企業では、従業員の生活を支えるため、インフレ手当の支給を始めています。ソフトウェアを開発するサイボウズは、契約社員を含め、直接雇用する社員に対してインフレ手当として一時金を支払いました。三菱自動車も12月に最大10万円を支給するほか、調査会社のオリコンも毎月の給与に特別手当を上乗せする制度をスタートしています。

政府は一連の物価上昇に対して、ガソリン代の補助、小麦価格の据え置きなど価格抑制策を相次いで導入しており、来年1月からは電気代の補助も開始する予定です。しかしながら、政府の対策だけでは限界があり、焼け石に水という面があることも否定できません。 政府の対策に加え、各企業が独自にインフレ対策を行えば、従業員の生活はそれなりに緩和されると考えられます。しかしながら、インフレ手当に対する企業の姿勢は微妙と言わざるを得ません。

調査会社の帝国データバンクによると、2022年11月時点においてインフレ手当を支給した企業は全体の6.6%となっており、5.7%が支給を予定しています。また、支給を検討中という企業も14.1%ありますから、全体の約25%が何らかの形で手当てを実施、もしくは検討中ということになります。

一方で、支給する予定はないとする企業は63.7%と大半を占めている状況ですから、全体としてはインフレ手当てに消極的と言わざるを得ないでしょう。 

 
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