さらにこの赤いバスボムは「生理中の気分が上がるラメ入り」です。これまた個人的な感覚では「風呂=きれいさっぱり洗い流す場所」なので、普段からラメ風呂とかわけわかめですが、特に清潔を心がけたい生理中にラメラメしたいとは思えません。そもそも生理中に憂鬱なのは気分由来というよりは、身体中がドロッとした粘膜に絡み付かれてるみたいな体調由来の理由が大きく、ラメで解決できるかどうかは微妙なところ。もちろんこれも個人的な感覚です。

 

そんなこんなを考え合わせてみると、この商品を企画したのは、つまるところ生理を経験したことがない人ーーつまり男なんじゃないかという想像が出てくるのは当然のことです。念のために付け加えると、ネット上のこういう疑問に対し、「チームには女性もいた」という情報もあることは承知しています。その場合でも、何人いたのか、どういう立場で参加したのか、その人の生理は軽いか重いかも気になります。前段で「個人的な感覚」と何度もいったのは、生理はあまりにも個人的すぎて100人いれば100人違うし、女子同士で「私の生理はこんなだけども、あなたの生理はどんな?」なんて話すこともそうはありません。そんな話を「男性もいる」チームで事細かに話せるかどうか。

いやこの商品は女性のアンケート結果をもとに……と言われそうですが、そこからひねり出した「お湯が血の色なら問題解決!」というアイディア、生理を前向きにとらえた「ラメで優雅な生理浴」というコンセプト、「Bloody(血まみれ)」という商品名まで、アンケートで「いいね!」ってことになったんでしょうか? 最近の「生理はオープンに語るべき!」という流れのつもりかもしれませんが、その商品を提供する人が「キラキラ!」とか「優雅!」とかいったって、それで「そっか! 考え方次第なんだ!」みたいに思えるほど、生理はライトなことではないように思います。これまた個人的な感覚ですが、生理期間中は生理に翻弄されないよう心頭滅却で過ぎ去るのを待つのみで、「せっかく生理なんだし、楽しんじゃえ!」みたいな感覚にはなれません。ファッションじゃないんで。

生理のことをオープンに語ることには私もすごく賛成で、そういうわけで今回はこんな原稿を書いてみましたが、ここまで書いてみてなんとなく気づいちゃったのは、このバスボムの方向性が、日本によくありがちな、現場をあんまりよく知らない人(もしくは情報のバリエーションに意識が向かない人)による「良かれと思って」な感じ、もっと言えば政府の女性活躍系で繰り出してくる「なんか違うもの」とどこか似ていることです。

「お金のかかる出産にどーん! と一時金」とか「仕事と家庭の両立でキラキラ輝く女性の時代」とか。もちろんこういうことを決めるチームにも「女性はいる」のかもしれませんが、どのくらいの存在感で、どのくらい意見が出せて尊重される環境で、どのくらいの人数いるのか。年間の出生数が初めて80万人を切ったというニュースを見ると、「お湯が赤ければ問題解決!」的な思考回路は、今も続いているってことなんでしょうね。
 

湯が赤くなる入浴剤「赤いバスボム」の売り出し方が炎上した理由。女性が求めているのはそこじゃない_img0
 

前回記事「【梨泰院事故】この事故を「自己責任」で片づける日本人は、民主主義を本当の意味で理解しているのか」はこちら>>

 
  • 1
  • 2