また新年が明けてしまいました。大人になるとほんと1年が早く、赤ん坊のころから知っている友人の子供が大学生に……とか聞くと、この20年、なんも変わらず生きている自分に「うへえ」となったりします。そんなことを思う年末年始をできるだけポジティブにとらえる意味でも、この時期は「何か新しいことを始めるいいタイミング」と思ってる私でして、じゃーん! 今年は仲間とともに「女性記者が選ぶ映画賞(仮)」を作ることにしました。 
 

「女性記者が選ぶ映画賞(仮)」立ち上げに至った背景

【映画業界のジェンダーギャップ】「女性記者が選ぶ映画賞(仮)」は男性優位を変える一歩となる?_img0

映画賞を作る理由は、ご多分にもれずガチな男社会である映画業界に、何か空気をかえる一石を投じたかったから。コロナ禍が始まった3年前に映画業界の友人とともに立ち上げたグループ「映キャン!」(月イチでYouTubeライブやってます(o^―^o)ニコ)も、「男女比5:5で映画を語る」というものでした。
そういう中でさらに出てきたのが「映画賞の審査員に女性が少なすぎる問題」で、これを打破するために作ったのが、審査員男女比5:5の「映キャン!」賞です。そしてさらなる問題提起として打ち出したのが「女性記者が選ぶ映画賞(仮)」。審査員は女性のみ、つまり男女比は「0:10」です。

 

審査員集めの過程で出てきた様々な反応


昨年末は女性記者、ライターの方々に声をかけて審査員を集め、さらに性別やジェンダーに限らず賛同してくれそうな人たちに声をかけ……とやっていたわけですが、この過程はなかなかに興味深いものがありました。口頭で、もしくは企画書を見て、ふたつ返事で「賛同する」と言ってくれる人、これは本当にありがたい。もうひとつは「企画書を見てから」と言う人。これは当然ながら「賛同します」と「賛同しません」に分かれるんですが、この「賛同しません」の人たちの話を聞くこと(説得するでなく)が、実はいろいろ面白いんですね。私が「へー」と思ったのは、「今の時代、男女同数であるべきじゃないか。女性のみというのは古いんじゃないか」という意見がーー意外と女性からもーーあったことです。

こういうのを聞くと、私は「日本の女性ってすげえな」と思います。例えば医大受験などで「実は男性が下駄をはかされていた!」という男性優遇のアンフェアがあれほどあったにもかかわらず、あくまでも「フェア」(カッコつきの「フェア」)であろうとするその姿勢が。その奥底には「優遇されて選ばれた」と言われることへの警戒心、男社会への過剰適応などがあるのではと想像しますが、「下駄」履かされてた男性側からそういうものを感じたことは、私個人としては一度もありません。そもそも「選ばれた男性」を選んだ人たちの構成、男女比が、男性優位なのに。
 

「女性が選ぶこと」「女性が選ばれること」の両方を当たり前に


私個人はこの賞が「女性記者のみ」である理由を、日本にあまたある映画賞全体のクオータ制と考えています。つまり「格差是正のための、マイノリティの定数割り当て」。例えば男性優位で構成された映画賞が5あるなら、女性優位の賞が5(理想としては)あってもいい。映画賞の男性優位の状況を変えられない、内部から「審査員の男女比を5:5に」という声が上がらない現状において、この方法はきわめて有効だと考えます。選ぶ側が男性優位であれば選ばれる側も男性優位になることは、アカデミー賞などでも証明されており、だからアカデミー会員の構成も「多様性」に沿って変化しています(ちなみに女性監督を増やすことがこの賞の目的のひとつでもあり、監督賞は女性のみです)。でも今回の映画賞で審査員を女性のみにした理由には、「女性もまた『選ぶ側』に立っていいのだ」ということを示したいという気持ちもありました。つまり「女性が選ぶこと」「女性が選ばれること」の両方を当たり前にしたかったわけです。

賛同してもらえなかった男性の中には「周囲の女性に意見を聞いて、自分と同意見だった」という人もいて、これも非常に興味深いものでした。「自分は女性に理解がないわけじゃない」と示すために、女性を利用しているみたいで。逆説的に思えますが「女性も賛成したからOK」とか「分からないから意見を言わなかった」という男性の在り方が、必ずしも正しいとは限りません。だからこそ話し合い、コンセンサスを作っていく。性別やジェンダーに関わらず、各論で意見の違いがあるのは当たり前。でも少なくとも同じことを大切に思い、同じ方向を向いているなら、協力することはできるんじゃないか。民主主義の本質って、そういうことですよね。

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写真/Shutterstock
 

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