慶子は「女は弱い」と知っていた。だから強くいられた

役者・入山法子の覚悟「さらけ出したものを面白がってくれる人たちと仕事をしたい」_img4

 

ーーこの映画における三好達治のどうしようもないポイントを、リスト化したら止まらなくなりました。ある意味楽しかったです(笑)。具体的な内容はネタバレ回避のために伏せますが、事実として知られているところでは、16年4ヵ月愛し続けた慶子と結婚するために妻子を捨てたシーンの浮かれ具合に引きました……。

東出さんも「俺、何やってるんだろう……」と困惑していました(笑)。

 

ーー「あなたのために」と押し付けがましい。嫉妬深い。自分の愛が受け入れられないと「冷たい人だ」と罵る。こういった暴力的な愛を三好からぶつけられる慶子を演じるのはしんどくなかったですか?

つらいと言えばつらかったですが、自分が望んでこの作品にチャレンジしたので楽しさの方がはるかに大きかったです。精神的に厳しいものになるだろうというのは撮影前から予測ができていたことですし。ただ、いつ爆撃されるのか、グー(三好の拳)が飛んでくるのかわからないという状況で生きようとしている女性だったので、その緊張感みたいなものはずっとありました。

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ーー三好は「愛」を大義名分に、慶子に暴力をふるいます。初めて三好に殴られるとき、玄関の上がり框から見下ろす三好は東出さんの高身長もあり、それは恐ろしい存在だったと思います。でも慶子は泣かずに、睨みつけて走って逃げた。2回目も睨み返した。

しかも怒鳴り返しましたね。

ーー慶子はなぜそんなに強くいられたのだと思いますか?

(しばし考えて)あの時代に女として生きていることで生じるマイナスポイントというか、女はどうしても弱い立場になってしまうことを知っていたからでしょうか……。だからこそ、自分はこういうふうにしか生きられないと思って立ち向かっている。多分そこまで彼女は考えていなかったと思いますけど、本能的にそう感じていたのかなと思います。

ーー三好は慶子の顔を愛しているのに、彼女の体ではなく顔ばかり殴ります。なぜだと思いますか?

慶子を好きだから、愛しているからじゃないでしょうか。東出さんがインタビューで、三好の慶子への暴力は自傷行為だみたいなことをおっしゃっていたんです。自分の愛しているものを殴ることで自分も傷つくという考え方を聞いて、歪んだ愛の形だな、詩人って何を考えているかわかんないなって思いました(笑)。