「そんなところまで⋯⋯!」細やかすぎるレシピ校正の解答はこちら
皆さん、どのくらい間違いに気づきましたでしょうか。
下に講談社のプロの校正者の「解答」があります。まずはこちらをご覧ください。
赤字は明らかに間違っていて修正すべきもの、鉛筆は校正者から編集者への「疑問出し」です。鉛筆は、絶対に修正すべきものではありませんが、限りなく赤字に近い鉛筆もあります。今回の例で言うと、1ページ目にある鉛筆がそうです。
「材料・作り方に絹さやナシ」
編集担当なら「ヤバっ! やってもうた」と大汗をかいて、「いやもう完璧に赤字ですよね、すぐ直します。ひ〜!」となります。「校閲ドリル」の解説には、
とありました。ほかにも、こんな赤字と鉛筆が。
・R E C I P I → R E C I P E
カラフルな誌面では、外国語の飾り文字がデザイン的に配置されることが多い。背景デザインであっても外国語のつづりは必ず辞書でチェックすること。
・2合(400ml) → 2合(360ml)
米の計量に使う単位「合」は、1合が180ml。1カップ(200ml)と違うことに注意。
・酢 500ml → 酢 50ml?
料理をしない人でも米より多い分量の酢を入れたら、すし飯がじゃぶじゃぶになってしまうことは想像できるはず。レシピでゼロが一つ多い・少ない間違いもよくある事例。
・砂糖、だし汁、酢 大さじ1と1/2 → 砂糖、だし汁、酢 各大さじ1と1/2
分量の前に「各」を入れる。
・出し汁 → だし汁
講談社の基準表記は「だし」。「出し」も許容表記だが、このレシピ中では「だし」多出のため、こちらに揃える。
・塩 適宜 → 塩 適量
「適量」は適度な量を加減して入れること。「適宜」は必要であれば入れることで、入れても入れなくてもいい。レシピ校正の際は二つの違いをしっかり把握したい。この場合は、作り方にきゅうりは「塩もみ」とあるので、入れても入れなくてもいい「適宜」ではなく、「適量」が正しい。
・いくら → イクラ
イクラはロシア語(外来語)のため、カタカナで表記する。
・仰ぐ → あおぐ
うちわであおぐので、「仰ぐ」ではなく、ひらがな表記の「あおぐ」か、または「煽ぐ」「扇ぐ」に。
・とりひき肉 → 鶏ひき肉
表記の統一。「にわとり」の肉のため「鶏ひき肉」に揃えるのがベター。
・いちょう型に切る → いちょう形に切る
サイズやタイプをいう場合は「型」。姿、形状、模様をいう場合は「形」。この場合はいちょうの葉の形に切るので「いちょう形」が正しい。
・句点なし →「。」を入れる
文末の句点なしは見落としやすいので注意したい。
・汁気 → 汁け 水気 → 水け
汁け・水けの「け」はひらがな表記。
・玉子 → 卵
講談社の基準表記は「卵」。「玉子」は不可。
・いり白ごまを「作り方」に入れる
「材料」にあるのに「作り方」に出てこない。
※以上、講談社の校閲ルールによる。
皆さんは、いくつ分かりましたか?
ちなみに解説には次のような文章も書き添えてありました。
関東雛と京雛では男雛(お内裏様)と女雛(お雛様)の位置が逆になることは知っておきたい。この場合はレシピ提供者の麻衣ママが「京都府在住」とあるので、男雛が向かって右、女雛は向かって左で正しい。
ただ、一般的には関東雛の配置が多いので、写真やイラストが京雛の配置になっていると読者から「間違いだ」という指摘がくることが多い。鉛筆の指摘は本来不要だが、編集者に口頭でこれらの注意を促すのが親切か。児童ものの図鑑などでは京雛の配置に関しては注を入れたほうが無難。
ちなみに写真のひな人形は紀州雛。麻衣ママの記述に「和歌山の実母」とある。昔、ひな人形は母方の実家が用意することが多かった。
文章だけでなく、写真のなかにあるひな人形の配置もチェックし、必要であれば編集者に確認する。それもまた校正者の仕事なんですね。なんて細やかな! と思いませんか。
ルールに忠実に、間違いがないか一語一語あたり、記事の文脈や背景を考慮しつつ、記憶に頼らずに資料を調べる。そのうえでただ真っ赤に訂正するのではなく、疑問点は鉛筆でそっと質す、指摘する、提案する。そんな校正者の職人的な仕事が、少し垣間見えたのではないでしょうか。
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