若い時からの好きな仕事を今もやることができて、本当に幸せ

 

宮本信子さんは観客から伊丹十三監督との馴れ初めについても聞かれ、「伊丹さんと私が初めて出会ったのはドラマ『あしたの家族』(NHK総合テレビ)での共演がきっかけです」と答え、これまたとっておきのエピソードを披露します。

「私は高校を卒業して、女優を目指して東京に出てきたばかり。伊丹さんはその時、海外で映画の撮影を終えて帰国されたところ。オシャレでハンサムだし、昼間からビールを平気で飲んでしまう。違う星から来たんじゃないかしらって思ってしまうほどでした。伊丹さんはね、実はテレビ局のディレクターさんとどちらが(私を)お茶に誘えるかどうかで競っていたんですよ。ディレクターの方は諦めてくれたのに、伊丹さんはしつこいのなんの。全然諦めてくれないんですよ」

その時の情景が目に浮かぶような話に会場は温かな笑いに包まれます。また女優として、ひとりの女性としての率直な想いも言葉にする宮本信子さん。

宮本信子、女優・妻・映画人としての想い「伊丹さんに認められて、そこから私は強くなれた気がする」_img9

提供:台北金馬映画祭

「伊丹さんは繊細な方、とっても自由な方でもあって。お互い出会った時は、俳優同士で先生と生徒みたいな間柄だったのかもしれません。それから子どもを産んで、伊丹さんが映画を作るようになって、同じ釜の飯を食べていくうちに、私をパートナーとして認めるようになって。そこから私、強くなったような気がします」。

 

もう少し踏み込み、自身の生き方について聞くと、「信じてもらえるような人、信頼できる人になりたいと思い続けています。名前に信じるという漢字が入っていますしね」と話し、場を和ませてくれながら続けます。

「子どもを産んでから10年ぐらいは仕事を休みましたが、若い時からの好きな仕事を今でもすることができて、それは本当に幸せなことだと思っています」。

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提供:台北金馬映画祭

今年は「秋の叙勲」で旭日小綬章を受章し、芦田愛菜さんと共演した映画『メタモルフォーゼの縁側』がヒット、また2024年に全世界配信開始予定のNetflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」に出演するなど、活動の幅はますます広がっています。

出演作を見返すことがあるのか、そんなことも聞くと、「ないんですよ。常に、今の仕事のことで頭が一杯で。ちょっとは休まなくちゃとも思いますが、女優の仕事をずっと続けることができれば、幸せでございます」と、これまた潔い答えでした。

女優として、妻として、映画人として、様々な立場から柔軟に答え、素顔をさらけ出すことも厭わない大女優・宮本信子さんの生き方から私たちも学べることが多いはずです。

 

<番組紹介>
『伊丹十三 全10作品
4Kデジタルリマスター版 完全放送』

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日本映画専門チャンネル開局25周年企画。デビュー作『お葬式』から大ヒット作『マルサの女』、10作目となる『マルタイの女』まで、全10作品の4Kデジタルリマスター版をオールメディア独占・テレビ初放送。また『お葬式』は無料放送を実施、デジタルテレビとBSアンテナがあれば誰でも視聴可能。

放送日:2023年1月8日(日)13時~
※日本映画+時代劇4Kではピュア4Kで放送。
※日本映画専門チャンネルでは2Kダウンコンバートで放送。

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取材・文/長谷川朋子
構成/山崎 恵
 

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