スマホの指紋認証を、深夜に……


「仲直りのために」ヨーロッパ旅行を提案してきた雅弘さん。「新婚旅行みたいなものだから」と言って、往復ビジネスクラスはもちろん、滞在先もハイグレードなホテルで千佳さんを喜ばせます。わざとらしい、と思いつつも、浮気を反省しているのは見てとれました。

「彼も42年間、そんな調子で女の子と遊んできたんだろうし、私も彼の酸いも甘いも噛み分けて大人なところ、洗練されたところを好きになったのも確かです。過去の生活を引きずっていただけなんだ、ここで貸しを作って、これからは自覚を持ってもらおうと思いました」

ところが、1週間という長い旅程が裏目に出て、最終日の夜にケンカをしてしまいます。

深夜、1人起き上がった千佳さん。普段は絶対見ないと決めている彼のスマホの指紋認証を、寝ている間にタッチさせて解除しました。 

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「指紋認証ロックにしたことで油断して、消す作業を怠っていたんでしょう。真っ黒でした。女性の名前をすでに知っていた私には、もじってあってもLINEの表示名ですぐわかりました。事前に調べていたので、浮気の証拠として、スマホは双方のアカウント名がわかる状態で、全文をおさえるべきだと学んでいたので早速実行。いつ彼が起きるかわからないし、2人のトークルームをスクロールして、それを自分のスマホで動画撮影しました。これならあとでゆっくり読めるし、時間のない中で証拠をおさえたいときにおススメです(笑)。

……なんて、今でこそ笑って話せますけど、その時は、裏切られたショックと怒りで手がぶるぶる震えて、涙もぼろぼろ出てきて。とてもスクショを冷静に継ぎ目なく撮っていくことができなくて、動画にしました」

 

証拠を手中にし、帰国した千佳さん。丸2日ご飯が食べられず、苦しんだと言います。自分がどうしたいのかを決めてから、雅弘さんにスマホを見たことを伝えました。

消されていなかった2週間分のメッセージから千佳さんが把握していたことは、雅弘さんとその女性Aさんは少なくとも1、2回の仲ではなく、今でも定期的に会っていること。肉体関係があること。少し前の、千佳さんに仕事が入っていたゴールデンウィークは2人で台湾に行っていたことでした。できるだけ冷静に伝えると、雅弘さんはがばっとひれ伏して土下座を始めたそう。

Aさんは元カノで、千佳さんと付き合う前に関係があった。縁を切りたいけれど、仕事のことがあり関係は絶てなかった、と謝罪しました。

膠着状態となったその後も、猜疑心が芽生えた千佳さんの鋭い観察眼の前では、関係を精算できていないことは明らかでした。

「別宅に抜き打ちで行くと、シャワーのヘッド部分をかけるフックが明らかに女性の背の高さのところに降りていたり、生理用品が入ったポーチやコンタクトがゴミ箱のゴミ袋のさらに下で見つかったり、衣類が袋詰めされて食器棚の奥に入っていたり。彼はうまくやっていると思っていたようですが……。それをコソコソ1人で確認していること自体が悲しくて、みじめで。泣きながら、ポーチやコンタクトをゴミ箱に投げ入れました」

そして数日のうちに、AさんのSNSで「見覚えのあるモノ」が出てきたことで、千佳さんは全面対決のために現場に乗り込むことになります。