作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく令和の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回検証するのは「結婚」という言葉に振り回され、予想もしなかった展開に巻き込まれてしまったケースです。

 
取材者プロフィール
千佳さん(仮名)33歳、フリーランスのMC(イベントなどの司会業)・PR
雅弘さん(仮名)45歳、広告代理店勤務
   
 


一見平穏な歳の差カップル。婚約時、男性の奇妙な提案とは?


取材対象者の千佳さん(32)は、お話を伺う当日、小雨にも関わらず走って都心のカフェにいらっしゃいました。小柄で引き締まった体にスポーティカジュアルが良く似合う方です。

「こんにちは! 今日はありがとうございます」という声が溌剌としていて、事前に伺っていたプロフィールに、MCと書いてあったことを思い出します。同時に、大筋で伺っていたエピソードとイメージが異なったため、意外な感じもありました。

「ゴタゴタは、去年やりつくしました。自分の中の『女』が爆発して、さっぱりしています。手が震えるほどの怒りを味わいましたが、とことん向き合ったからでしょうか、今、不思議と人生これからだって思えるんです」

千佳さんは30歳から3年間、12歳年上の男性・雅弘さんと同棲していました。

「私はフリーランスのMCで、大阪で定期的な仕事が週に2件あり、週の半分をあちらで過ごす生活でした。彼は広告代理店勤務で、出張や接待も多く、当初はとても自由だったんです。そのことが、あのような事態を引き起こしてしまった。……お互い束縛しない関係が心地よかったから仕方ないですね。

出会いは私が28歳、彼が40歳、いわゆる合コンでした。第一印象は、キリンさんみたいに背が高くて、穏やかな人だなって。東京のちょっといいところのお坊ちゃんと聞いて、納得する感じというか。正直に言ってアラフォーの独身でこんないい人がいるんだ! ってびっくりもしました。『会員制のお寿司屋さんに、連れがドタキャンしたから千佳ちゃん来ない?』とメッセージがきて、それが始まりです」