武相荘は記念館ではなく、暮らしのテーマパーク​


桂子さんと圭男さんは、2001(平成13)年10月に「武相荘」の一般公開を始めました。白洲夫妻の華麗な経歴や粋な生き方が注目されるにつれ、夫婦像は独り歩きを始めるように――

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正子さんの書斎。ここにずっとこもって執筆をしていたそう。ミュージアムとなっている建物内は撮影不可。今回ミモレのために公開していただきました。


世間の白洲夫婦のイメージと実際の暮らしぶり


圭男「虚像のようなところもあるけど、注目され続けているのは、彼らの生き方が今の時代の指針になるところがあるからなのかもしれません。夫婦がかっこいいと言われている分には、それはそれでいいんじゃないかと思うんです」
桂子「あんまり世間さまの夢を壊すのもどうかと思って。私の書いた『次郎と正子』を読んだ方も”夢を壊さないでください”って言うんですもの(笑)」

土間にタイルを敷いた洋風のリビングルームや、正子の書斎、囲炉裏のある部屋など、白洲夫妻の息づかいが感じられる「武相荘」。正子さんが集めた骨董や着物、調度品などを季節に合わせて展示しています。

圭男「実は意外に質素な生活。長い年月をかけて趣味の範囲内で家具や食器を集め、正直に生きてきた結果がこの空間。いい意味での生活感がここにはあるんです」
桂子「でも結構俗物なところもあるんですよ。いつか私、『白洲家の真実』を書いてやろうかと思うくらい(笑)。でも、うちでどれだけ俗物でも、外の人に迷惑をかけず、全然違うように見せていたのも才能でしょうね」

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「この景色がなくなるのは嫌だから、とっておきたいと思ってここを公開することにしたんです」(圭男さん)

2015年にはレストランもオープン。桂子さんが両親のために作っていた料理や、白洲夫妻にまつわる料理をベースにしたメニューが味わえます。

圭男「ここは記念館や美術館ではなく、暮らしのテーマパーク。日本人にとってかつて日常だったこうした暮らしは、今や非日常。鳥の声や葉っぱの音が聞こえる中、空間を感じ、美味しいものを食べてゆっくり過ごしてほしいと思っています」