人生の半分を過ごした皇室への想い
――陛下と雅子さまは、9月には英国ロンドンでのエリザベス女王の国葬にご出席されました。これも本当に久しぶりの海外へのお出かけとなりました。
「葬儀へのご出席であり、皇室の海外訪問の主旨である友好親善のためとは違うかたちでした。
ただ、雅子さまは片道およそ16~17時間も飛行機に乗り、機内泊を含めて2泊4日のたいへんハードなスケジュールを無事クリアーされました。
そして、葬儀の合間には各国の王族の方々と親しく話す機会もあったことは、雅子さまにとってもとても心に残る旅だったのではないかと思います」
――エリザベス女王の葬儀は世界中に報道されました。雅子さまは宿泊先の出入り口で一般の人からも声をかけられた際に、手を振り笑顔で会釈されていました。ご体調はいかがでしょうか。
「医師団の見解にあるように、まだ体調に波があることに変わりはないと思います。
ただ、こんなときにはこう対処すればよい、という病気との付き合い方をつかんでうまくコントロールできるようになりつつあるようです。
お誕生日の感想でも、これまで必ずふれていた体調についてまったくふれていませんでした。
国民の皆様の幸せを常に祈りながら、できる限りの務めを果たしていくことができるよう努力したいと思っております。
と、来年以降に向けての前向きなお気持ちを強調するお言葉が印象的でしたが、いよいよこれから令和の皇室の本格的な活動が始まることを、強く意識しているお言葉のように思いますね」
――感想の中で、雅子さまが年齢にふれた部分がありました。
「とても印象に残りました。結婚して皇室に入ったのが29歳半で、59歳の誕生日でそのときから29年半たち、ちょうど真ん中となるというのです。
いつの間にか人生のちょうど半分ほどを皇室で過ごしてきたことに、感慨を覚えております。
これまでの人生を思い返してみますと、29歳半までの前半にも、また、皇室に入りましてからの後半にも、本当に様々なことがあり、沢山の喜びの時とともに、ときには悲しみの時も経ながら歩んできたことを感じます。
とおっしゃっています。
皇太子妃として活動し、ただ途中で病気になって長く療養生活を送り、今でも病気と折り合いをつけながら過ごしている中で、ちょうど人生の折り返しである、とあえておっしゃっている。
これまでの歩みを振り返りつつ、これからも皇后として歩むのだ、という雅子さまの決意や覚悟を改めて感じさせる文章でした」
この人生の大きな転換であるという一文は、雅子さまの想いがこもっているのでしょう。
今年のお誕生日の感想の中で、ひときわ輝いて人々の心をつかんだお言葉でした。
来年は、雅子さまのお出ましの機会もさらに増え、笑顔を見られることが期待できます。
【雅子さま59歳のポートレート】
写真/宮内庁提供
●大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。宮内庁を中心に、皇宮警察をはじめとする皇室関連の取材を続けている。皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、70歳を過ぎても現役記者として活動している。
●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)
出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に、『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(こう書房)、『美智子さま あの日あのとき』カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へ―』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、 『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
文/高木香織
構成/片岡千晶
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