あえてルーティンを決めない方が僕には合っているかも
——クリニックに訪れる子役さんからはどんな影響を受けていますか?
山崎:やっぱり無邪気な子どもたちがいることで撮影現場の雰囲気が明るくなりますよね。でも、子どもとはいえお芝居に関してはプロなんですよ。本番ギリギリまで動き回っていたのに、直後に泣くシーンを完璧にこなしていて。しかも、リアルな表情で本気で訴えかけてくるので、こちらも本気で感動してしまうんです。彼らの集中力や切り替えの早さに驚かされています。
——山崎さんが集中するために欠かさず行なっているルーティンはありますか?
山崎:今は朝にコーヒーを飲むくらいですかね。仕事場にもお気に入りのコーヒー豆とマグカップを持ち込んで、淹れたての1杯を味わうことで集中力を高めているので、それなりにこだわりは強いですよ(笑)。ただ、昔は舞台の本番前に自分できめたルーティンを守っていたのですが、バタバタしていてそれができなかった日に緊張してしまったり、上手くいかなかったりする経験をしまして。あえてルーティンを決めない方が僕には合っているんです。
——脚本家の先生から佐山卓の詳細なプロフィールが送られたそうですが、役づくりに大きな影響を受けたポイントを教えてください。
山崎:佐山は小児科医の叔母に育てられて、彼女から自分の発達障害の特性や、それが他者にどういう受け取られ方をするかを学びました。叔母と向き合うことで自分のことを客観視できるようになって、次第に特性をコントロールできるようになっていたんですね。自分自身の実体験がベースにあるから、自分も児童精神科医として子どもたちと向き合うことを大切にしていて、相手のことを否定しないし、必ず受け入れながら話をするんです。診療スタンスの裏側にあるストーリーや佐山の思いを僕も大事にしながら演じたいですね。
——作品を通して発達障害について学び、当事者の方とも会話を重ねたことで、新たな発見や驚いたことはありましたか?
山崎:撮影中は当事者の方がカメラの横で僕らのことを見守ってくれているのですが、不慣れな環境であるはずなのに、まったく緊張することなく率直な意見をくださるんですよ。それも彼の特性らしくて、基本的に自分のペースで動いているから周囲の目線は気にならないらしくて。
彼自身、学生時代から頑張ってもみんなと同じように振る舞えない瞬間があったそうです。大人になってからも仕事が続かなかったり、誰よりも残業しているのに、みんなができることができなかったりして。その度に「集中力が足りない」「気合いが足りない」と言われてきたそうです。そして26歳で初めて病院に行って発達障害と診断されて、そうやって大人になってから気づくパターンも多いそうです。今は認知が広がって受け入れる体制が少しずつ出来ているものの、まだまだ生きづらさを実感する瞬間も多い……といった心境を語ってくださって。だからこそ、今回のドラマを通じて、少しでも当事者に寄り添える人が増えて欲しいと。僕自身も、日々、そんなことを考えています。
——エンターテイメント作品ではあるものの、社会的な使命感も抱いていると。
山崎:そうですね。自分にも子どもがいるし、子どもがいる友だちもたくさんいるのですが、実際に我が子の特性に悩んでいる方もいるんですよ。原作に出合う前から“凸凹”を持つ子どもに接してきたし、身近に感じていたのですが、すぐには分からないことも多いんですよ。大抵の場合は「他の子よりもちょっとワガママかな」という認識で終わってしまうし、独身だったら理解を深めようと思う機会がなかったかもしれません。でも、今回のドラマを観ていただければ、受け入れることができなかったとしても、考えるきっかけにはなるはずです。それが僕自身のモチベーションになっていることは確かです。
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