アメリカ人男性と結婚し、10年近くも不妊治療を続けていたという雪美さん(42歳・仮名)。長い治療期間中に流産を3度も経験し、さらにコロナ禍で夫婦仲が崩れてもおかしくはない状況に。しかしながら、保護犬を引き取ったことで夫婦の状況は一変。さらに辛い状況から彼らを救い、奇跡を呼び込んだ“ある行動”とは……? 夫婦の選択は、あまりに尊いものでした。

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「通勤電車で、突然お腹に激痛が...。勤務先に「今流産した」と言えなかった妊婦の葛藤」>>

 
取材者プロフィール
雪美さん(仮名)42歳
職業:専業主婦
家族構成:1児の母、現在妊娠中
    
 


仕事もない、子どもも産めない。何のために生きてるんだろう?


コロナ禍の影響により仕事がなくなり、家族以外と交流もできず、さらには3回目の流産の後、不妊治療も中断することになってしまった雪美さん。

一人きりで家の中で過ごすことが多くなると、どうしてもマイナス思考に陥ってしまい、辛い日々を過ごしていたと言います。

「当時は、“私は何のために生きてるんだろう”を本気で思っていました。子どもも産めず、働きもせず、自分の存在価値が本当にわからなくなって。このままただ老いていく人生は辛すぎると、一人で涙が止まらなくなることもよくありました……」

そんな妻を見かねたご主人は「保護犬を飼おう」と提案。夫婦はさっそくボランティア団体をいくつか当たり、見学や面接を繰り返し、推定2歳の柴犬を引き取ることになりました。

「私は何も知らなかったのですが、保護犬を引き取るまでにはすごく時間がかかりました。ボランティア団体の方が我が家を訪問して、犬がきちんと生活できるかどうか、間取りや周辺環境など細かにチェックするんです。

引き取った後も数ヶ月はお試し期間で、毎日犬の様子をレポートし、動画を送る義務があります。お世話やしつけの方法も丁寧に教わりました」

そして、ゴンくんと名付けられた柴犬のワンちゃんは、ようやく雪美さんご夫婦の家族になりました。けれど、人間に傷つけられた過去を持つゴンくんとの生活は、思った以上にハードルが高かったそうです。

「ゴンのお世話に慣れるまでは、かなり大変でした。ゴンはブリーダー放棄犬でネグレクトを受けていた犬だそうで、ボランティアに救出されるまでは、おそらく小さなケージの中から一度も出たことがなかったようです」