生きるために必要不可欠ではなくとも、心の豊かさを保つためには大事なもの
ーー坂間を通して劇中で描かれる問題と向き合い、黒木さん自身はどんなことを考えましたか?
黒木:“真実”と“正義”は、似て非なるものだということを感じました。真実は一つだけど、正義は人それぞれ捉え方が違うんですよね。全員にとっての正義を見つけることは簡単ではないし、きれいごとに聞こえるかもしれないけど、それを考え続けることを諦めてはいけないなと。私は坂間を演じることで、広い視野を持つことの大切さを学びました。
ーー仕事の価値観も人それぞれですが、黒木さんが俳優として貫いている“正義”はありますか?
黒木:坂間と同じく、私も本気で向き合うことを大切にしたいと思っています。やっぱり、いろんな人の本気が集まるとすごい作品が生まれると思いますし、セリフをちゃんと覚えるなど、本気を出すための準備は怠りたくない。人間なので邪念が生まれる瞬間もありますが、そういう時はマネージャーさんに愚痴を聞いてもらっています(笑)。どんな役柄でも関わるからには責任を持って演じ切りたいと思っていて。それが私なりの正義ですかね。
ーーみちおは真実を追求するため“職権発動”して型破りな捜査をすることがありますが、俳優も職権発動できるとしたらどんな瞬間に使いたいですか?
黒木:コロナ禍では難しいのは把握しているのですが、撮影現場に温かいケータリングがあったら、俳優だけじゃなく全員が幸せになれるはず。もちろん俳優にそんな職権はないですけどね(笑)。さらに欲を言えば、もう少し国に芸術活動を支援して欲しいですね。エンターテインメントは生きるために必要不可欠なものではないかもしれませんが、心の豊かさを保つためには大事な要素だと思うんですよ。
Information
映画『イチケイのカラス』
公開日:2023年1月13日(金)
原作:浅見理都「イチケイのカラス」(講談社モーニングKC刊)
監督:田中亮
脚本:浜田秀哉
プロデューサー:高田雄貴、八尾香澄
出演:竹野内豊、黒木華、斎藤工、山崎育三郎、柄本時生、西野七瀬、田中みな実、桜井ユキ、水谷果穂/平山祐介、津田健次郎、八木勇征、尾上菊之助、宮藤官九郎、吉田羊、向井理、小日向文世
配給:東宝
浅見理都の同名コミックを原作とするテレビドラマ「イチケイのカラス」の劇場版。入間みちおが東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称・イチケイ)を去ってから2年が過ぎた。岡山県瀬戸内の長閑な町に異動した彼は、史上最年少の防衛大臣に対する傷害事件を担当することに。一方、イチケイでみちおと共に数々の事件を裁いた坂間千鶴は、裁判官の他職経験制度により、弁護士として働き始める。偶然にもみちおの隣町に配属された坂間は、人権派弁護士の月本信吾と組んで小さな事件にも全力で取り組んでいく。そんなある日、町を支える地元大企業に、ある疑惑が持ち上がる。
撮影/榊原裕一
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
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