冬場は特に要注意! ヒートショックの恐ろしさ


ヒートショックとは、気温の変化で血圧が上下し、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞といった心臓や血管の疾患が起こること。暖房で暖まっている部屋と、廊下やトイレ、脱衣所などとの温度差が大きくなりやすい冬場は特に注意が必要です。

入浴中の死亡者数は年間1万9000人と言われていて、これは交通事故死の4倍にものぼる数です。すべてがヒートショックによる死亡ではありませんが、冬場の入浴中の死亡数はその他の季節に比べ数倍に増えているため、ヒートショックの影響が大きいと考えられます。

相談者・直子さんのご友人は、「父親が熱中症を起こして倒れた」と言っていましたが、これは重度の脱水症状によって意識を失ってしまった「浴室熱中症」です。こちらも相当な注意が必要ですが、今回はヒートショックに的を絞って話を進めていきましょう。

 


ヒートショックになりやすい人


ヒートショックは、65歳以上の高齢者、高血圧や糖尿病などの動脈硬化、不整脈のある方が影響を受けやすいと言われています。下記はヒートショックになりやすい人のチェックリストですが、直子さんの父親は複数該当しているようです。

 


要チェック!ヒートショックの予防法


高齢者の入浴事故を予防するために、消費者庁では以下の5点を呼びかけています。

 

①入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう
温度の急激な変化を避けるため、入浴前には浴室や脱衣所を暖めておきます。暖房器具を入れるのが好ましいですが、昨今の光熱費の高騰に躊躇される方もいるかもしれません。浴槽に湯を張る時に蓋を開けておいたり、シャワーから給湯するだけでも、蒸気で浴室の温度が上がります。

②湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安に
42度以上のお湯に浸かると血圧が一気に低下します。湯温は41度以下に設定するだけで急激な血液低下は防げるもの。ただ、それでも長湯するとめまいやふらつきが起こって熱中症になりかねません。消費者庁も「41度以下で10分以内にお風呂から上がること」を推奨しています。

③浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう
入浴時は、浴槽で倒れたり、滑って溺れる可能性もあります。浴槽から出る時は、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がりましょう。足腰が弱くなると踏ん張りが利かず、立ち上がれなくなる場合もあります。長湯になりすぎると倒れている可能性もあるので、ご家族は注意してください。

④食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう
食後は体全体の血圧が低下しやすい状態になります。食後に入浴するなら、最低30分以上間を空けるようにしてください。また、飲酒は体温が上昇するため、血管が拡張しやすくなります。飲酒をする時は、入浴後もしくは最低1時間は経過してからが安心です。

⑤入浴する前に同居者にひと声掛けて、意識してもらいましょう
ヒートショックを起こして気を失うと、溺死してしまう可能性が出てきます。これは高齢者に限った話ではありません。若い方でも、いつもより家族の入浴時間が長いなと感じたら、声をかけた方が安心です。同居する家族がいない高齢者は、自宅で入浴せず、銭湯やデイサービスを利用するというのもひとつの方法ではないでしょうか。
 

断熱リフォームの補助金も


他の対策としては、窓に断熱シートや断熱フィルムを貼る、窓を複層ガラスや樹脂サッシ等の断熱効果のあるものに交換する、外壁や屋根、天井等を高性能な断熱材に改修する、といったことも有効です。

断熱リフォームに関しては、国や自治体が補助金の交付を行っています。たとえば環境省では、「既存住宅における断熱リフォーム支援」として、1住戸あたり120万円を限度とした補助金交付を実施。二重窓(内窓)の設置などにも対応しており、現在2023年3月3日までの申請分を受け付けています。

他にも、経産省、国土交通省、環境省の3省連携による「住宅省エネ2023キャンペーン」や、国交省の「省エネ改修工事にかかわる所得税の特別控除」など、子育て世帯も活用したい制度がいくつも設けられています。
 

ヒートショックを起こしてしまったら


めまいやふらつきを感じたときは、立ち上がらず、気分が落ち着くまで体育座りや四つん這いなどでじっとしてみてください。ただし、失神や意識障害、心筋梗塞などの症状を起こした場合は、直ちに119番で救急車をお願いします。

水滴は身体の熱を持っていくので、湯船の中で発見したら浴槽から出して必ず拭いてください。人手不足であれば、お湯を抜いて救急隊を待ちましょう。その際、嘔吐して異物が喉に詰まらないよう、顔は横向きにしてください。
 

この時期見たい「ヒートショック予報」


日本気象協会と東京ガスが共同開発した「ヒートショック予報」をご存じですか? ヒートショックのリスクが高い10月~3月の間、リスクの目安を5種類のアイコンで知らせてくれるサービスで、日本全国約1900地点の予報を無料で閲覧することができます。

また、ヒートショックの知識と対策を啓蒙する「STOP!ヒートショック」では、入浴の際の対策チェックなどが紹介されています。

冬場の室温の低下は、ヒートショックの危険だけに留まりません。2018年、WHOは健康の観点から「冬季の室内温度は18度以上にすべき」と勧告を出しました(高齢者や小児に対してはさらに暖かい温度を推奨)。18度未満は血圧上昇や循環器疾患のリスクが高まり、16度未満は呼吸器系疾患に影響が出ると指摘しています。室温は健康そのものに関わってくる大切な問題なのです。
 


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 


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