「ここにしかないものを。本当にいいものだけを」。
世界中から、宝物のように素敵なものを買い付ける


「小さい頃から美しい洋服、キリッと端正な佇まいのものに惹かれていましたね。一緒に住んでいた祖父がテイラーを営んでいて、その仕事ぶりを間近で目にしていたのもとても大きかったと思います。仕立てている時の手際の良さ、あざやかさ、それを眺めているのが大好きで。ファッションの仕事に就きたいと思っていたのは幼い頃からの憧れだったんです」。専門学校を卒業後、根岸さんはアパレルの会社に入社し、接客なども経験。そして、20代後半になるとバイヤーとして買い付けにも行き始め、ショップのディレクションも行うように。

「ちょうどその頃、パリコレを見に行ったのですが、それも大きな転機に。デザイナーの情熱、会場の熱気、そして洗練された空間……圧倒され、心が震えるような体験だったんです。それからですね。パリコレに出ているようなハイブランドをミックスして並べられるセレクトショップに憧れるようになったんです。ヴィンテージの服が大好きだったのですが、そこにお金を貯めて買ったラグジュアリーブランドの服を合わせるという着こなしがますます楽しくなったのもこの頃だっと思います」。細やかな手の技が施されたヴィンテージの服とデザイナーのパッションが注ぎ込まれた服を自由にミックスさせるその感覚が大好きで、おしゃれすることを心底楽しんでいたという根岸さん。

当時は、セレクトショップでもラックごとにブランドを提案していた時代。「ブランドを自由にミックスさせるような提案も、自由に合わせて着こなすというマインドもまだ根づいていない時でした。だからこそ、いろんな感性をミックスさせたお店を作りたい」と思っていたそうです。

「一緒にやってみない? と社長に声をかけてもらったのがちょうどそんな時。ロンハーマンを日本にオープンさせるということは、まさにそれを叶えられるチャンスでもあったんです」。

 

根岸さんは立ち上げ当初からバイヤーとしてウィメンズのセレクトを担当していました。なんと、たった1人で! 世界各地をまわり、洋服だけでなくジュエリー、靴やバッグなどの買い付けをすべて行なっていたというのだから驚きです。「最初の1年半はずっと一人で出張していたんです。……よくやっていましたよねー(笑)。いま振り返ると、本当にそんな気持ちになります」と笑顔でさらりと話してくれましたが、一体どういう気持ちで乗り切っていたのだろうと思わずにはいられませんでした。

 

「命を燃やすように、魂を削って仕事していたと思います。でも、“ロンハーマンにしかないもの”を探したいという一心で続けていました。デザイナーやディレクターに会って色々見せてもらって、ホテルに戻ったら計算機を片手に数字追う、買い付けはそんな毎日なんです。今ほどの経験もありませんでしたから、緊張感もとってもありましたし、いつだって真剣勝負でした。そんな時を経て、仲間が増え、チームになって。それからだと思います。ロンハーマンが発展していったのは、仲間と一緒にバイイングできるようになったことも大きかったんです」。

他のメンバーが加わっても、根岸さんが一人でセレクトを行なってきた時と志しは同じ。むしろメンバーそれぞれの感性が加わり、さらなる化学反応があったのだそう。「軸は同じ、でも感性が違う人同士が交わるからこそ、もっと膨らんで、もっと豊かになるんですよね。ショップも同じで、そんなふうにぐっと進化していったのだと思います。ハートの根っこが同じ者同士で向き合えたからこそ、ポジティブに発展ができるんだなって、そんなふうに実感しています」。

 

”POTTERY”(陶器)という名の通り、ふっくらとカービーなフォルムは一見ユニークですが、体を通すと華やかな立体シルエットが生まれる『CFCL』のアイテム。ストレッチ性に優れ、ほとんど縫い目がなく、着心地も快適なのだそう。迷いのないピンク、クリーンなグリーン。普段なら手に取らないアイテムも、なぜか「着てみたい!」と思わせてくれるのも、ロンハーマンの魔法!