シニア向け分譲マンションの特徴


シニア向け分譲マンションは、所有権があり、売却・相続・賃貸も可能な資産価値のある住まいです。利用権や賃貸借契約である有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅とは異なり、法律上は一般的な分譲マンションと同じ不動産資産となります。

住居は独立していて、1LDK~2LDKくらいの間取りが中心。建物全体がバリアフリー構造で、高齢者が生活しやすいように配慮されています。転倒しないように手すりも設置されており、住戸内の緊急コールボタンやライフセンサーをはじめ、看護師の配置、地域の協力医療機関や介護事業所との連携も充実しています。ただし医療や介護についての基準はなく、サービスは物件によって異なります。

高齢者向けの設備やサービスは充実していますが、シニア向け分譲マンションは介護施設ではありません。自立して生活できることが入居条件になる場合が多いものの、要介護や要支援の認定を受けている人でも入居できる物件もあります。年齢条件は60歳以上や55歳以上など物件によって異なりますが、入居条件は設定されていないことの方が多いようです。

ただし介護はマンション内のサービスでは行われないので、介護が必要な場合は外部に依頼する必要があります。

マンションによっては、食事や掃除、洗濯などの家事サポートや安否確認サービス、医療の緊急対応が提供される場合もあります。また、シアタールームやカラオケルーム、プールや図書室などの娯楽施設を併設しているのが特徴です。趣味のサークル活動も行われていて、高齢者が楽しく暮らせるように工夫されている物件が多いようです。

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どんな物件がある?


相談者の麻衣子さんが見つけたという札幌のシニア向け分譲マンションは、コスモスイニシアが手掛ける「イニシアグラン札幌苗穂」で、近くの「イニシアグラン札幌イースト」も併せて販売しています。コスモスイニシアは、北陸新幹線開業予定のJR福井駅前にも「ザ・福井タワー イニシアグラン」を展開しており、2026年には福岡のJR久留米駅前にも新たな物件が誕生します。

不動産調査を行う東京カンテイが2022年7月に発表したレポートによると、シニア向け分譲マンションは、2023年までに竣工予定の物件を含めると全国で98物件・1万4947戸が供給されるとのこと。

エリア的には関東と関西が多く、関東ではフージャースコーポレーションが東京近郊に11物件を展開しています。

一方、関西を拠点としたハイネスコーポレーションは、北欧やアメリカの高齢者住宅を視察したことがきっかけで「中楽坊」シリーズをスタートさせ、以来10年以上かけて10棟・約1500戸を提供しています。


気になるお値段は?


シニア向け分譲マンションの平均価格は、2020年以降の供給物件で4386万円。関東地方に限定しても、平均価格は4245万円と全国平均と大差はありません。バブル期は価格が高く、5879万円でした。坪単価は、2000年代は平均199.9万円、2010年代は200.5万円、2020年以降は240.4万円と、近年は上昇傾向にあります。

管理費も月々平均7~9万円ほどで、富裕層がターゲットであることは明らかです。

 

購入を検討するときの注意点


シニア向け分譲マンションはサービスが充実しているため、販売価格や管理費は当然高くなります。また、全国的に数が少なく市場が未成熟で、所有する人の年齢制限もあるため、売却したいと思っても買い手が見つからない可能性も。将来介護が必要になって有料老人ホームなどを検討した際、不都合を感じるかもしれません。

設備やサービスメニューが豊富な点が、シニア向け分譲マンションの大きな特徴でもあり魅力ですが、年齢を重ねるにつれて利用頻度が減るものも出てくるでしょう。その時になって、高額な管理費をもったいないと感じることが出てくるかもしれません。そのため、長い目で見て自分にとって余分な設備やサービスがないかを検討することも大切です。

シニア向け分譲マンションは魅力的な住居です。中古物件や賃貸の募集もあるようなので、興味がある方はまずインターネットで物件情報を検索してみてはいかがでしょうか。また、親御さんだけでなく、50代以降の方はご自身の住処として検討する、というのもありかもしれません。


写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

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