そしてブレンダンは、2003年にゴールデン・グローブ賞主催団体であるハリウッド外国人俳優映画記者協会の元会長からのセクハラで精神的ショックを受け、さらには離婚や母親の死などが重なったことで一時は鬱状態に。しばらく第一線を退いていましたが、今回はそこからのカムバック。
キーもブレンダンも50代、一度は俳優としてのキャリアで絶望の淵に立たされたところからの復活ということで、マイノリティや熟年層にとって、本当に意味のある受賞だったといえます。受賞者たち全員が、映画のような挫折と再生の物語を辿ってきて、人生後半でようやく、今回のオスカーに辿り着いた−−そんなバックグラウンドを知った上で授賞式の受賞スピーチ動画を観ると、それだけで涙が溢れてきます。
中でも、ミシェルが「この受賞は、希望であり、新たな可能性を示すものです。夢は叶うという証しでもあります。そして女性たちに対し、『あなたはもう旬を過ぎた年齢です』だなんて、二度と言わせません」と語った言葉には、本当に勇気をもらえました。
#MeToo運動などを機に改善へと動いてはいるものの、ハリウッドでの性差別や人種差別はまだまだ根強いのです。つい先日も、プリヤンカー・チョープラー・ジョナスが、「22年女優をやってきて、最新作で初めて男性俳優と同じギャラをもらった」と告発したばかり。だからダイバーシティ・ムーブメントへの配慮があろうとなかろうと、今回のアジア人勢の受賞はすごいこと。
だからこそ、助演男優賞のプレゼンテーターだったアリアナ・デポーズはキーの名前を読み上げるときに涙声になり、会場全体が、キーの受賞に大喜びだったのですね。ミシェルは受賞後の記者会見で「ダイバーシティのために長年がんばってきて、今夜その限界の壁を突破することができました。これは私たちが戦いに勝てるという証拠。絶対に諦めないで。諦めたらそこで終わり」と語りました。
性差別に関しては、脚色賞を受賞した『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のサラ・ポーリー監督が、「“ウーマン”という言葉がタイトルに入っているのに選んでくださってありがとう」とチクリ。監督賞は男性しかノミネートされていなかったし、やはりまだ男性上位の業界だということなんでしょうね。
少しずつ、でも確実に、白人と男性優位の世界から変わり始めているハリウッド。その風を感じられる授賞式となりました。
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