まさか自分が「メンヘラ」になるなんて


「唐突に別居が始まった後も、妻とは定期的に会ったり連絡をとっていました。まだ夫婦なので業務連絡的なこともあるし、でも僕としてはとにかく戻ってきて欲しくて、彼女が行きたがっていたレストランの予約を苦労して取ったりして、何とか時間を作ってもらう状況。

会っている時は険悪なムードになりはしないものの、根本的に塩対応で、僕がやり直したいと言っても『もう無理』の一点張り。そんな中、彼女の誕生日がきたんです」

俊哉さんは復縁のチャンスと思い、お祝いしたいと妻を誘いましたが、この日は実家に帰るとのことで断られてしまいました。けれどせっかくなのでプレゼントをサプライズで宅配BOXに入れておこうと妻の部屋を訪れ、そこで衝撃の光景を目にしてしまうのです。

「ちょうどマンションの前に着いたとき……エントランスから妻と知らない男が出てきたんです。咄嗟に物陰に隠れて二人を観察したら、距離感や雰囲気的にもう『クロ』だとわかりました」

 

「気づくと妻に『その彼、誰?』と声をかけていました。彼女もかなり驚いて動揺していました。何でここにいるのって顔で。……はい、たぶん黙って立ち去るべきだったと思います。でもあまりのショックで、自分で自分をコントロールできなくて」 

妻は見知らぬ男性のことを「友だち」と言い、二人は食い下がろうとする俊哉さんを置いてその場から去って行きました。

 

「このときのことを思い出すと、今だに吐き気がして身体が強張ります。僕が突然一人になって苦しんでる間、妻はもう新しい男を見つけて……セックスしてたんですよね。恥を承知で告白しますが、いい歳したおっさんの自分が、その後数日間は涙が止まらなかったんです。怒りに寂しさに嫉妬に後悔に……あらゆる感情が怒涛に襲ってきて混乱状態でした。言っても、たかが男女間のトラブルじゃないですか。どれだけそう自分に言い聞かせても、まったく冷静になれなかった」

俊哉さんがこれほど精神的に不調をきたしたのは、39年間の人生で間違いなく初めてだったと言います。その後しばらくは食事も喉を通らなくなり、なんと栄養失調で病院で点滴まで受けることになってしまったそう。

「何ていうか……いわゆる『メンヘラ』ですよね。過去にそういう女の子と関わり苦労したことがあって、当時はその思考が全く理解できず毛嫌いしてましたが、まさか自分がそうなるなんて。いろんなツケが回ってきたんですよね。『もう死にたい』『生きてる意味がない』って、本気で思いました」

そんな俊哉さんがまず混乱の中で強く感じたのは「嫉妬と怒り」でした。別居中とはいえ彼女は人妻なのだから、それは不倫。弱った精神状態の中、相手の男性を訴えることも考えたそうです。

「今思うと本当に情けないですが……感情的になって、妻にも遠回しにそう言ったんです。すると彼女は冷静に答えました」

ーーできるものならどうぞ。言っておくけど不倫の立証は大変だし面倒だよ。ググってみて。私もあなたの浮気の証拠たくさん持ってるので。