現在、大盛り上がりを見せているワールドベースボールクラシック。4戦全勝で1次リーグ突破という日本の強さもですが、高校球児のように全力でプレーするヌートバー選手や、デッドボールのお詫びに相手選手にお菓子を届けた佐々木朗希選手など、選手たちの人柄やマナーの良さもさらなる盛り上がりを生んでいます。

WBCが盛り上がる陰で「優勝請負人」に飛びついた日本球界にモヤモヤ_img0
写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

が、そんな気持ちのいい状況の裏で、これが日本球界の現実か……と突きつけられる出来事が。ある大物メジャーリーガーを、横浜DeNAが獲得することが発表されたのです。多くの野球ファンは、「優勝請負人が来る!」と大喜び。しかし、その裏にはとある事情が。見えてきたのは日米の野球界、そして世論における大きな「違い」でした。果たして日本は、これでいいのでしょうか!?

 


超大物選手が日本に!? 上手い話には裏がある……


先日、横浜DeNAベイスターズは、メジャーリーグ・ドジャース球団所属のトレバー・バウアー投手の獲得を発表しました。バウアーは2020年のサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)受賞投手で、控えめに言っても超がつくどころではない大物投手です。しかも32歳とまだ若い。ちょっと言葉は悪いですが、これまでの、年をとって力が衰えてきたから最後に日本にひと稼ぎしに来る、というパターンとは完全に違い、今がピークとも言える年齢です。

ではなぜそんなすごい選手が日本に来るのか? 当然、誰もが疑問を抱くことでしょう。そうです、「上手い話には裏がある」とはよく言われますが、このバウアー選手の来日も、あまりにも大きすぎる裏があったのです。

ご存知の方もいるかもしれませんが、実はバウアー選手にはDVの禁止規定違反で出場停止処分を受けた、という経歴があります。しかし、日本の報道のほとんどは「サイ・ヤング賞投手がやって来る!」とお祭り騒ぎで、DV規定違反については「出場停止処分を受けていた」とサラッと触れている程度。ですが事はそこから受ける印象よりも深刻です。

バウアー選手は2021年、SNSで知り合った女性に性行為中暴行を働いたということで告訴されました。その後、証拠不十分ということで不起訴となりましたが、これを「ならばオールOK」としなかったのがアメリカ球界。メジャーリーグ機構でも独自の調査をおこなうことになり、その結果バウアー選手は休職処分となったのです。しかも休職期間はその後どんどん延長されていき、最終的に何と、324試合(2年)の出場停止というあまりにも重い処分が科せられたのでした。

メジャーリーグ機構には2015年よりDVに対する厳しい罰則規定が設けられており、違反したとあればどんなに大物選手でも見逃してもらえません。近年アメリカでは「Zero Tolerance」といって、こと差別や虐待の問題においては、一切の寛容性を見せず厳しく罰する姿勢というのが重視されています。それはスポーツ界においても同様のよう。それゆえメジャーリーグ機構は独自調査機能を持ち、「アウトだ」と判断したらバウアーほどの大物でもちゃんと処罰するわけです。ここが、バウアー獲得にあたって「裁判で有罪になっていないことが重要だ」とした日本球界とは、大きく違うと言えるところでしょう。

 
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