都内のスーパーに並ぶ鶏卵(2018年当時)。写真:Shutterstock

鶏卵の供給不足と、それに伴う価格高騰が深刻化しています。直接的には鳥インフルエンザの影響が大きいのですが、背景にはもっと複雑な事情があり、この問題は簡単に解決しそうにありません。

 

卵は価格の優等生といわれ、私たちは安い価格で卵を購入することができました。しかし、昨年後半あたりから、卵の価格が急上昇しており、2022年と比較すると2倍以上になっているケースも珍しくありません。

卵は食卓にもよく並びますが、卵を必要としているのは一般家庭だけではありません。マヨネーズなどの加工食品には卵が大量に使われていますし、ケーキなど菓子類にとっても欠かすことができない食材です。卵の用途は幅が広く、卵不足は私達の生活に大きな影響を与えます。

今回、卵の値段が急騰したのは、鳥インフルエンザの感染が予想以上に拡大し、鶏卵の供給が減ったからです。

一部の養鶏事業者は、鳥インフルの影響で大量の殺処分を余儀なくされており、卵を産む鶏の数が一気に減ってしまいました。消毒などの措置が終了しても、事業者が生産を再開するまでには、新しい鶏を育てる必要があり、半年程度の時間がかかります。最低でも今年の夏頃までには混乱が続くとみてよいでしょう。

では、年後半になれば以前の状態に戻るのかと言えば、そういうわけにもいきません。その理由は、養鶏事業者はかなりの無理を重ねて生産を行っており、そうした生産体制を維持することが難しくなっているからです。

ここ2〜3年の間に、エサの原料となるトウモロコシ価格が大幅に上昇しており、事業者の経営を圧迫していました。寒い地域にある養鶏場の場合、暖房を使う必要がありますから、電気代や灯油代がかかります。エネルギー価格も高騰していますから、事業者にとってはまさにダブルパンチです。

高齢化の問題も深刻です。

養鶏事業があまり儲からないことから、新規に取り組む人が減っており、高齢化が進んでいることが以前から指摘されていました。今回のインフルエンザを克服しても、生産を再開するには、あらたに資金を借り入れる必要があり、高齢の事業者にとっては大きな負担となります。今回のインフルをきっかけに、引退を決断した事業者も多いと言われますから、半年後に、同じような生産体制が復活するのかは何とも言えない状況です。

困ったことに問題はそれだけにとどまりません。

 
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